フラットコーテッド・レトリーバーの組織球性肉腫

数ヶ月前から前足の軽い跛行が見られたが、最近になって体が揺れるような跛行になってきたという主訴で来院。前肢上腕内側が腫大していたため、針生検にて細胞診をしたところ、悪性の肉腫が疑われる細胞の極端な大小不同や明らかな核の悪性所見がみられた。また体表の数ヶ所に小腫瘤が散見されたため、2ヶ所の腫瘤についても細胞診を行なったところ、これらも同様の所見が得られた。フラットコーテッドと言う犬種からして、組織球性肉腫が疑われたため、前肢内側の10cm程の腫瘤とその近くにあった約1cmの腫瘤と腰部に近いところの皮下の腫瘤を減容積の意味も含めて切除バイオプシーをする事にした。病理組織検査の結果は組織球性肉腫でした。文献を見ると外科手術+化学療法を実施したフラットコーテッド37例の研究では中央生存期間123日間、緩和治療のみでは17日間と言う結果である。そこで今回の症例は外科手術と化学療法剤(ロムスチン)の治療を選択した。現在化学療法を実施しているが、ロムスチンの副作用として起こる可能性のある白血球減少や肝障害は現在のところ無く、一般状態は良好である。写真は前肢上腕内側に見られた腫瘤(筋層と筋層の間に存在)の切除した際の術前所見(上段左)と切開切除中(上段右)、摘出した複数の腫瘍塊(中段左)、術後(中段右)そして体表の他の部位にあった腫瘤の切除した組織(下段)

 

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