中年齢の雑種犬の胃腺癌

一ヶ月前から下痢と嘔吐があったが、他院より頂いていた数種類の薬を内服していたが、治らないということで来院。ルーチン検査をしたところ、血液検査では膵炎の検査を含めて実施したが、何も異常はなかった。しかしX線検査と超音波検査の結果、胃内の大量の胃液とガス、胃壁の肥厚、胃の小湾にあるリンパ節の腫大、十二指腸の近位の壁の肥厚等が見られた。また胃の内視鏡検査では胃底部の中央から幽門洞まで胃壁の肥厚が見られ、胃の拡大をしようとしても皺壁が伸びない状況だった。そのため胃壁の肥厚部のバイオプシーを数ヶ所実施した。さらに飼い主の方とご相談の上、試験開腹を実施した。開腹すると胃壁の重度の肥厚(中央から遠位すべて)と付属リンパ節の腫大がみられたため、それぞれバイオプシーを実施した。可能であればビルロート法で手術も視野に入れたが、飼い主の方はそれ以上の負担は掛けたくないと希望でしたので、胃液や胃ガスを抜く為の胃チューブの設置とこのチューブから空腸チューブを装着する方法で体力の維持に勤めるようにした。病理組織検査の結果は胃腺癌だった。胃の腺癌は腫瘍全体の1~2%といわれ余り多くはない悪性腫瘍だ。浸潤性や転移性が強く悪性度は高い。術後は制吐剤はもちろん潰瘍治療剤粘膜保護剤等を中心に治療し、空腸チューブからの栄養補給を実施した。若干体力がついて一時的に元気にはなったが、17日目に夜中の救急病院に呼吸が急に苦しそうになったということで診ていただいたが、その後亡くなった。恐らく誤嚥性肺炎の可能性があったと思われる。もう少し早めの検査や処置ができていたら寿命もある程度延ばせたかもしれません。写真①(エコー検査による胃壁の厚みと隣接するリンパ節)写真②(エコー検査による十二指腸壁の肥厚)写真③④⑤(胃カメラによる胃壁および幽門の肥厚像とバイオプシー鉗止による採材)写真⑥(試験開腹の際の胃の全体写真)写真⑦(胃チューブと空腸チューブの設置後のその位置関係を示すX線写真)

 

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