急性リンパ球性白血病の犬

      

 

7歳のスタンダードプードルが突然の右側鼻孔からの鼻出血で来院。血液検査では血小板6000(正常300000)、総白血球数231880(正常12000)、内リンパ球(左及び中央写真・ほとんどがペルオキシダーゼ染色及びエステラーゼ染色が陰性のリンパ芽球 )223300(正常3000)、クロナリティー検査はTリンパ球 のモノクロナールな増殖、骨髄検査(右写真)では骨髄内全体にリンパ芽球が占めている。

治療は播種性血管内凝固症候群か免疫介在性血小板減少症の可能性があったので、低分子へパリンとステロイドホルモンの治療に入った。翌日ビンクリスチンという抗癌剤の治療を開始、体表に紫斑、メレナの排便、吐血等の症状が出現したため輸血を実施。ビンクリスチン投与2日後には白血球数が減少し、8日目には正常値となり、出血傾向はなくなったが、貧血が進行してきたため、再度輸血。その後もCOPで治療を継続していったが、一般状態は改善し、貧血も改善して行った。1ヶ月後に両眼球内の前房に腫瘤を確認、ステロイドの減量をしていたが、再度増量し投与して頂いたところ、次第に前房内の腫瘤も急激に縮小して行った。現在初診から2ヶ月になるが、食欲はほぼいつもと変わらなくなってきているし、体重が減少してきているものの、元気はあって飼い主の方も満足していただいている。しかも血液検査の結果はステロイドの影響で肝酵素がやや高いくらいで、総白血球数やリンパ球の異常はほとんど無くなっている。

犬のリンパ球性白血病はそれ自体発生頻度はごく少ないものですが、当院では今回の症例を含めてこの2ヶ月間で4症例を経験している。しかもそれぞれの病期が異なっており、リンパ腫から慢性リンパ球性白血病に移行したものや慢性リンパ球性白血病が急性リンパ球性白血病に移行する時期だったり、白血病が原因した自己免疫性溶血性貧血やDIC(播種性血管内凝固症候群)を伴ったものなど、様々な状態のリンパ球性白血病でした。そしてまだどの子も治療により普段と同じような生活ができている。

 

 
   

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