救命救急医による呼吸器病学の3日間セミナーに出席して

NAHA(日本動物病院会)の3日間の国際セミナーに参加してきた。         講師はDr.Rozanski。タフツ大学の准教授で集中治療室室長であり、内科学会認定専門医、救命救急学会認定専門医の資格もお持ちの米国では有名な先生です。内容は上部気道疾患や下部気道疾患の診断と治療そして胸膜腔疾患の治療、肺血管疾患(血栓塞栓症)の診断治療、ウイルス性呼吸器感染症の診断治療など、かなりの内容あるセミナーでした。最後に難症例の診断治療について検討したが、これもおもしろいものばかりだった。     興味深い内容をいくつか挙げてみます。

気管虚脱のステント療法が最近増えてきていますが、以外に緩和的な治療であり、気管全体に装着しないと上手く行かないのと結局は進行していくことになるということですので、安易にステントをするよりも、頚部の気管虚脱であれば気管リングの装着の方がより長期コントロールが出来るので、お薦めのようです。

米国での感染性呼吸器疾患の1つであるインフルエンザが、特に人のインフルエンザ(H1N1)が猫に感染した症例があるといわれていますが、実は犬にもインフルエンザ(馬インフルエンザと関連するH3N8)が存在し、ある保護施設での抗体検査で42%という数字が出ているので、日本にも入ってきている可能性もあるということでした。

気管支炎は急性気管支炎(喘息)と慢性気管支炎と慢性再発性喘息に分類することで治療がかなり異なることから大切なことになる。

肺血管疾患の中でも肺血管塞栓症が色々な疾患と関連していることが多く、次のような疾患があげられる。免疫介在性溶血性貧血・敗血症/重篤疾患(15~20%)・蛋白漏出性腎症・クッシング症候群・犬糸状虫症・腫瘍(リンパ腫や血管肉腫etc)・股関節全置換術・プレドニゾロン療法(高用量・長期間)。またこの血栓症の治療法についても薬剤の使い方が、かなり明確になった。血栓症治療薬のD-ダイマーはごく最近動物での有効性が無いことが証明された。