犬の肥満細胞腫の最新情報

17日(日)の午後から東京で開催された犬の肥満細胞腫のアップデートと言うタイトルのセミナーに参加してきました。日本小動物がんセンターの小林哲也先生のご講演でしたが、いつもながら大変分かりやすい説明で、内容の充実したものでした。  
講演内容の一部をご紹介します。以前に会陰部(お尻周り)や鼠径部(内股)の肥満細胞腫は悪性のタイプが多いと言われていましたが、お腹の中のリンパ節(内腸骨リンパ節)や内股のリンパ節(鼠径リンパ節)の転移があるか無いかが問題で、最近では口唇の皮膚や包皮、陰嚢に出来るタイプが厄介なものが多いということです。また治療に関しては化学療法は単剤よりも多剤併用の方が奏功期間がかなり長くなるということもはっきりしています。化学療法のもう一つのオプションとして、ネオアジュバンド療法という方法があることも参考になりました。炎症や腫れがある場合(ダリエ症候群)に手術をし易くするため、予め化学療法をして、小さくしてから手術をし、その後また化学療法を行なうというものです。またここ数年分子標的薬が注目をあびてきていますが、(c-kit)遺伝子変異のあるものは勿論100%の奏効率ですが、遺伝子変異の無いものは28.5%の奏効率ということです。つまり分子標的薬の効果は従来の化学療法と同程度ですが、グレードの高い肥満細胞腫でも奏功する可能性が有ると言うメリットがあります。しかも副作用は比較的軽度というのが魅力です。但し、費用が少々お高いのが難点ではあります。飼い主の皆様には分かりにくい内容かもしれませんが、犬の皮膚の腫瘍の中で最も多い肥満細胞腫の治療法が、今後は分子標的薬と化学療法の併用によって、副作用がより少なく、さらに寿命が長く延ばせられるのではないかと思います。