犬の(免疫介在性)多発性関節炎

呼吸困難、発熱などを主訴にラブラドール・レトリバーが来院しました。
数件の病院で様々な検査をしていただいたそうですが、原因が分からず行った治療にも反応がなかったとのことでした。

当院に来院した際には体温が39.7度と発熱があり、そのために呼吸が荒い状態でした。
身体検査をすると、左右の手根関節の軽度の腫脹があり屈曲時に疼痛がありました。
歩行時にはぎこちない前肢を突っ張ったような歩き方でした。

血液検査では白血球数の増加があり、好中球増多症、単球増多症でした。
血液化学検査では異常所見は無く、炎症のマーカーであるCRPは高値となっていました。
胸部・腹部レントゲン検査、心電図検査、超音波検査などでは異常所見はありませんでした。

手根関節を含めた複数関節の関節液を採取して細胞検査すると、本来粘稠性があるはずの関節液の粘稠性が無く、好中球が多数観察されました(正常であれば好中球はいません)。
抗核抗体、リウマチ因子の検査では問題ありませんでした。

各種検査の結果より(免疫介在性)多発性関節炎と診断しました。
免疫介在性関節炎は自己免疫が関節を構成する組織を標的にして炎症を引き起こす非感染性関節炎です。
治療としては、非ステロイド剤、ステロイド剤、抗リウマチ薬、免疫抑制剤などの内科的治療を行います。

今回のラブラドール・レトリバーでもステロイド治療を行い、治療直後より熱も下がり元気・食欲とも回復し、関節の痛みも消失しました。
今後は症状をみながら徐々に薬を減量する予定でいます。

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