巨大食道症の犬

巨大食道症の犬

 

13歳の犬が「ここ数日吐いていて食欲がない」との主訴で来院しました。

 

身体検査にて可視粘膜がやや白く、重度の脱水がありました。また、吐き方を見ると嘔吐ではなく吐出(口や食道から吐き出すこと)であったため食道の疾患が疑われました。
血液検査では軽度の貧血、白血球数の増加や腎臓の数値(BUN、CREA)の上昇、甲状腺の数値(T4)が0.6μg/dlと低下していました。
レントゲン検査では消化管内には多くのガス貯留像があり、食道は拡張していました。

患者情報や検査結果を踏まえて巨大食道症と診断しました。

巨大食道症は副腎皮質機能亢進症や甲状腺機能低下症、重症筋無力症、腫瘍などの基礎疾患により惹起される場合や原因不明によるもの(特発性)があります。

オーナー様と相談により原因追求(基礎疾患の探査)は行わずに対症療法をしていくこととしました。

静脈点滴による脱水の緩和、消化管運動を亢進させる薬、食道炎・胃酸分泌を予防する薬、重症筋無力症の治療薬、甲状腺機能低下症の治療薬を同時に開始しました。

巨大食道症では食道の筋肉が機能しなくなっているために、食事が胃へと通過できずに食道内に停滞してしまいます。そのため、食事の際は器を高い位置に置くことで重力により食事が胃に流れやすくなります。さらに食後は抱き抱えて体を縦にするなど日頃の生活も工夫しました。患者様の協力もあり、定期的に皮下点滴をして食欲も戻り、吐出の頻度も劇的に少なくなりました。

 

巨大食道症は食道の筋肉が何らかの原因により機能を失い、食道が拡張し蠕動運動が低下することで、食物が食道に滞ってしまうことが問題となります。そのため吐出を繰り返し、吐出したものを吸い込むことで誤嚥性肺炎を起こします。
どうしても吐出が治まらない、ご飯も食べられない場合は、胃チューブを設置しチューブからご飯を入れて管理することもあります。

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