10歳雄のキャバリアキングチャールススパニールが呼吸困難で来院した。レントゲンで咽喉頭に異物が閉塞しているのが分かった為、鎮静麻酔下で摘出した。あと数分で低酸素症で亡くなっていたでしょう。
X線写真と飲み込んだおやつの包装紙。
10歳雄のキャバリアキングチャールススパニールが呼吸困難で来院した。レントゲンで咽喉頭に異物が閉塞しているのが分かった為、鎮静麻酔下で摘出した。あと数分で低酸素症で亡くなっていたでしょう。
X線写真と飲み込んだおやつの包装紙。
8歳の日本猫が2か月ほど前から少し元気なく、最近元気食欲なし、粘液性のよだれの症状で来院。身体検査で発熱(39.7℃)粘膜・皮膚の貧血色があった。血液検査(完全血球検査・血液化学検査)でヘマトクリット18.4%で非再生性貧血、総白血球数正常でストレスパターン、ヘモプラズマの赤血球寄生、血小板減少症(48000)、グロブリンやや高値、以前FIV(+)であった。まずは静脈点滴とヘモプラズマの駆虫のためテトラサイクリン系抗生剤の内服したが、嘔吐が出てしまうため、中止して静脈点滴と制吐剤、食欲増進剤で胃腸の調子を戻してから、エンロフロキサシンの注射に通っていただいた。ヘモプラズマが見られなくなったにもかかわらずその後ヘマトクリットが17.8%とさらに下がってきたため、輸血も始めた。輸血後、骨髄のバイオプシーも実施して細胞診をしたところ、骨髄球系の過形成と赤芽球系の軽度の低形成(好塩基性赤芽球まではあって、それ以降の細胞成分に乏しい)があり、巨核球は少ないが裸核のものが存在する。つまり骨髄内にはある程度の分化段階のものが存在するのに末梢血液中の主に赤血球や血小板がかなり少ないのは骨髄を出てから免疫介在性に破壊されている可能性が高いためだと考えられる。そこで免疫抑制剤としてステロイドの高容量を開始した。その結果反応して数日でヘマトクリットが35%まで上がった。しかしその後貧血が徐々に進行し、ステロイドを3mg/kgまで増やしたが、免疫低下による細菌感染症や発熱もあって減量せざるを得なくなり、現在ヘマトクリット20.2%、血小板33000、総白血球数(好中球)正常で維持しているが、油断はできない状況だ。今後汎血球減少症になるようであれば骨髄異形成症候群なども考えなくてはならないだろう。写真は骨髄塗抹と血液塗抹標本。
血液塗抹
血液塗抹
骨髄標本
骨髄標本
5歳の日本猫の陰唇部に以前から少しずつ大きくなってきた腫瘤が最近目立ってきた。避妊手術と一緒にこの腫瘤を摘出することを希望。手術した後の病理組織検査結果は低悪性度の悪性神経鞘腫。手術マージンには腫瘍細胞は(-)脈管浸潤もなし。将来は遠隔転移はないものの局所再発はあり得るので、定期的な観察は必要。
犬同士のケンカ騒ぎでチワワに大型犬がぶつかったか、口が当たったかで眼球が突出してしまったということ。救急で来院し、すぐに整復手術になった。眼球を押し戻しつつ、眼瞼の縁に糸をかけて4糸程縫合し、術後は1週間~2週間で抜糸する。視神経や網膜などの損傷があると術後も視力が戻らないことがある。
写真上が損傷後、下が術後
高齢のG・レトリーバーの指間の皮膚腫瘤が1か月くらいで大きくなってきたという主訴で来院。細胞診をしたところ円形の独立した腫瘍細胞が多く見られた。一見、組織球種のような円形の細胞で核も円形であったが、よく見ると細胞が楕円形のものが多く核のクロマチン結節の構造がリンパ球のようにも見えるものが多かった。また核の悪性所見は少なく、核分裂像もほとんどないので、悪性の腫瘍ではなさそうだった。指間部ということで拡大手術はできないため、最小限の摘出手術になった。病理組織検査の結果は皮膚形質細胞腫だった。皮膚形質細胞腫は髄外性形質細胞の一つで通常は良性だが、他に例えば孤立性骨形質細胞腫のようなものがあってそれが皮膚にできたりということもあるので、要注意ではある。
最近急に大きくなってきたという高齢猫の皮膚腫瘤を細胞診(FNA)した結果、肥満細胞腫であることが分かった。猫は比較的良性タイプのものが多いが、表面に潰瘍があり、直径2センチ大で増大傾向があるため、万一悪性だったことを考え、周囲2センチ以上のマージンをとり、深さ方向にも筋膜と皮筋も切除することにした。幸いなことにリンパ節腫大や脾臓や肝臓などの腹部臓器には腫瘤病変はなく、胸部にも異常がなかった。術前と術中、術後の写真を下に示す。
いずれも①12歳と②13歳の高齢の猫で呼吸促拍、元気食欲なしまたは低下という症状で来院。2頭ともX線検査で胸水の貯留があった。
①の猫さんは血液検査で慢性腎不全になっていたが、腹部X線検査と超音波検査で右腎の萎縮と腎盂内の結石の存在と左腎の肥大と形の不正・腎臓内の構造の異常などから腎臓の腫瘍を疑い、左腎の針生検を実施したところ、採取できた細胞から上皮系の悪性腫瘍が疑われた。また胸水の性状は比重や有核細胞数から変性性漏出液であり、沈査の細胞診で、やはり上皮系の悪性腫瘍の疑いが濃厚であった。この猫さんは胸水の抜去により呼吸がある程度改善したが、腎不全も存在していたこともあり、状態は余り良くなかった。しかも1週間もたたないうちにレントゲン上で肺の病変がかなり悪化。そこで少しでもストレスのない自宅で一緒に過ごす時間を増やしていただくため、業者さんに酸素ボックスと酸素発生器のレンタルをすることになった。それから約一週間後くらいに呼吸困難になり、自宅に往診で伺ったが、その場で自然に近い状態で亡くなった。恐らく肺の腫瘍と腎腫瘍との関連性がありそうだった。
上の写真(右が来院時・左がその1週間後の胸部)下の写真(左右の腎臓のサイズと形状の違い・抜去した胸水)
②の猫さんは食欲の低下はあったが、少しずつは食べていたそうだ。但し、胸腔内の液体貯留が大変多く、その抜去した胸水は変性性漏出液でこの液の沈査による細胞診ではかなり悪性度のある上皮系の腺癌のようだった。肺実質にすでに上皮系悪性腫瘍が存在し、抗がん剤などの化学療法は難しい状況だった。そこで腫瘍に少しでも抑制効果のある非ステロイド性抗炎症剤(NSAID’s)とβ-グルカンの豊富に含まれたサプリメント、そしてホメオパシーを応用したドイツの歴史あるホモトキシコロジー療法により、2回胸水を抜いただけでその後次第に胸腔内の水分が減少してきた。しかも元気や食欲も改善し、全体に活発になってきた。今後少しでも良い状態で過ごせることを願いたい。
上の写真(左が初診時・右は1回目の胸水の抜去後の胸部X線写真)
中年の雑種犬がおもちゃのぬいぐるみを解体して、中にある音の出る円形プラスチック製の部品(直径4cm程)を19個飲み込んでしまったということで救急来院した。飲んで間もなかったので、症状は全くなかったが、催吐処置をするには異物が大きく、手術はできるだけしたくないという要望がありましたので、内視鏡で取り出すことになった。物がプラスチックだということと、この日は食事をたっぷりした後だったので、レントゲンにははっきりした異物は写し出されていません。ただ間違いなく飼い主が飲み込むのを見ていたのですからこれを取り出すしかないということです。結局1回の内視鏡処置ではフードが多すぎて、それに異物が隠れてしまって限界があったため、9個分だけ摘出して、翌日の胃内のフードがなくなってから、残りの異物を取り出すことになった。写真は胃カメラで見た胃の中の状態(右にバスケット型異物鉗子・中央に異物)と取り出した19個の異物です。
7歳の雌のラブラドールレトリーバーが急性の激しい嘔吐と食欲廃絶、元気消失と衰弱で受診。クッキーの詰め合わせの大箱を壊して中身を包み紙ごと完食した後からの症状で、下痢も伴っていた。体重42kgで肥満、ボディーコンディションスコアーは8/9。普段から間食も多く、尚且つ盗み食いが頻発して飼い主が手を焼いていた。体温39.4℃、腹部圧痛、衰弱と虚脱、血液検査では白血球増多(好中球と単球の増加)犬特異的リパーゼの高値、レントゲン検査では十二指腸とそれ以外の小腸内のガス像、胃内のガスと食物か異物か判断できない物質の存在、等の所見から胃内異物や腸閉塞および急性膵炎を疑いすぐに静脈確保し、輸液を開始した。点滴にH2ブロッカー、制吐剤、FOY、鎮痛剤(フェンタニール)、抗生物質を投与。吐き気がなくなり、状態が少し安定してから、試験開腹を実施したが結果は異物の閉塞は一切なく、驚いたのは膵臓が80%ほど白く壊死したように変色して浮腫を起こしていた。その一部を細胞診したら、好中球が多数存在し、すでに壊死を起こしていた。術後は消化の良い低脂肪食に消化酵素を混ぜて与えていただき、粘膜保護剤、整腸剤なども与えてもらった。さらにホモトキシコロジーの膵炎治療を加えたら、1週間経過した頃にかなり急速に状態が改善して元気が出てきたのと、食欲も次第に戻ってきた。2週間後には散歩や軽い運動もできるようになった。但し便の状態は時々緩めの便がでることがあった。3週間後では普通の生活ができるようになったが、依然、低脂肪食と消化酵素、そしてホモトキシコロジーのアンプル液と錠剤の5種類の内服による補助療法を週2回与えて安定していた。結局2か月ほどかかって犬特異的膵リパーゼの数値が正常となり、ほぼ完治となった。写真は異物の疑いと膵炎の病理検査の目的で試験開腹をした時の膵臓の状態を示したもの。
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中年齢のミニチュアダックスフンドがここ数日呼吸が苦しそうになってきたという主訴で来院した。患者は元気食欲がなく、吸気時の努力呼吸をしていたため、上部気道の狭窄や閉塞が疑われた。咽喉頭部のX線検査で喉頭部に円形の腫瘤が内側から突出しているのが分かった。鎮静剤と酸素療法で呼吸は安定するが、酸素室から出るとすぐに呼吸困難になる為、麻酔下で喉頭の内視鏡検査をした。円形の赤みを帯びた肉質の腫瘤が観察された。針生検では好中球とリンパ球が散在して見られたのみなので、炎症と浮腫がそこに存在していると判断し、検査後はICUで管理し、プレドニゾロンを投与したところ、急激に呼吸が改善し、3日目には退院していただき、数日のプレドニゾロンと、その後の暫減により、現在も全く症状がなく、通常の生活をしている。
写真はレントゲン写真の治療前と治療後の喉頭部。そして内視鏡で口腔内を観察している写真には喉頭を完全に閉鎖している喉頭嚢の腫大した赤い(ポリープ様)腫瘤が見られる。
一見、反転喉頭小嚢(あるいは外反喉頭球形嚢)にも見えるが、短頭種ではないのと元々良く吠える性格であること、細胞診で炎症細胞だけが見られていたこと、腫瘍細胞が見られていない、ステロイドによく反応し全く腫れている部分がなくなったことなどから、閉鎖性喉頭炎と診断した。