シェジーの生涯

昨日、シェジーちゃんという雑種犬が救急で来院し、病院で亡くなった。16歳を過ぎていた。肝臓や腎臓、心臓も機能が落ちて来ていたが、食事の量も少ないながらも、何とか食べて家の中を歩き回ることも出来ていた。しかし昨日から急に食べなくなり、赤黒い下痢が急に出てきて、無目的に苦しそうな鳴き声を出すようになって、急遽来院した。しかし容態は悪く、意識がほとんど無く、体温の低下、血圧低下、努力呼吸、粘膜色蒼白、まさに死期の近い状況だった。飼い主の奥様は苦痛のないようにしてあげたいと言う希望でしたので、パッチ式の麻薬系鎮痛剤を使ってあげようということになりましたが、容態がさらに急変し、1時間ほどで自然に呼吸停止そして心停止になりました。

シェジーちゃんが来院してから、病院の待合室で、今後の事を何度もどなたかと携帯電話で相談をされていました。電話のお相手は海外にいらっしゃる息子さんだったのです。息子さんが学生の頃、家族の方たちも仕事の関係でイスラエルにいらしたそうで、湾岸戦争の空襲を経験し、飼い主に二度も捨てられたという子犬を新聞で見つけ、かわいそうなので飼ってあげる事になったそうです。一番可愛がっていた息子さんが今月末に帰国する予定だったので、何とかそれまで元気でいて欲しかったということだったのです。当然の事ですが、奥様は当初大変興奮し、そして落胆しておりましたが、長時間苦しむと言うことも無く、ゆっくりと呼吸も止まっていき、自然に心停止をしていった様子を見て、やや気が楽になったようでした。また休日の時間外にドクターが2名いて、私もたまたま居合わせましたので、大変感謝していただきました。

シェジーの亡くなった後、イスラエルにいた時の若かりし頃のシェジーとご家族のお写真を拝見させていただき、さらにお手紙も頂きました。お手紙の一節をご披露させて頂きます。

シェジーという名は聖書中の王、ヒゼキア王のあだ名で意味は「エホバ(聖書の神)が強める」です。私達はこの子にとっては3度目の飼い主ですが、この名は最初の飼い主から貰いました。最後にシェジーの母国語ヘブライ語で感謝の意を表したいと思います。

・・・・・・・ヘブライ語の文章(表記不能)・・・・・・・翻訳:ボクを100%看護して下さり、ありがとうございます。ボクを忘れないで。

飼い主に二度も見捨てられ、戦火を生き抜いてきたシェジーちゃん、やさしい家族に引き取られ、幸せな生涯を送られて、本当に良かったね。やすらかに眠ってください。