当院の人気者「ノン君」天国へ・・・

体重360gの子猫が公園に捨てられているのを通りかかった人に拾われ、数日後当院に健康診断のために連れて来られたのは1996年の7月でした。他に兄弟が2頭いて、里親さんを探しているということでした。当時は今よりも野良猫が多く、里親を募集してもほとんど貰い手が見つからない状態でしたので、拾った方もとても困っていられましたので、当院が引き取ってスタッフ全員で育てることにしたのです。「ノン」という名前がつけられ、6ヶ月齢で去勢手術をしました。ほとんど1日中医局とロッカールームのなかを自由に走り回ったり、専用のベッドに寝ていました。体重もピーク時には6.6kgになって、肥満傾向になったこともありました。とても健康で穏やかな性格でしたし、誰にでも可愛がられる当院の人気者でした。ところが半年ほど前、食欲が落ちてきたり、軟便をするようになってきたので、一通りの検査や腸管のバイオプシーもして診断をしましたら、猫の三臓器炎、つまり胆管肝炎と慢性膵炎と炎症性腸症を同時に起こす疾患になってしまい、数種類の内服薬や点滴・静注などの治療を駆使しましたが、17歳という年齢もあって、一進一退を繰り返し、ついに数日前から食事を全く食べなくなってしまいました。そんな中、以前勤めていた当院OBの獣医師も具合が悪いことを聞きつけて川崎からお見舞いに来てくれました。また夜間救急病院に勤めている看護師も仕事の前にお見舞いに来てくれました。しかし昨日からは意識も無くなり、今朝から体温の低下と不整脈の出現、瞳孔散大となり、自然に近い状況で、2013年9月16日午前11時15分息を引き取りました。幸運にも丁度台風が通過している時間で、患者さんもいらっしゃらなかったので、スタッフ皆んなで看取ってあげる事が出来ました。いつも世話をしているスタッフの看護師は泣き崩れてしまいました。ノン君は本当に皆んなに愛されていましたし、人気者でしたし、病院のマスコット的存在でもあり、何よりお互いの癒しになっていたのです。そして更にとても大事なお役目を果たしてきたことがあるのです。それは献血をすることで貧血していた猫ちゃん達、延べ数十頭の命を救ってくれていた影の功労者だったのです。[悲しいことに今現在輸血の血液を供給していただける商業施設は、日本には1件もありません。その為どこの動物病院も基本的に飼い主様にお自宅の猫ちゃんの献血をお願いして、実施している状況です]

昨夜は私が用意したお線香とお焼香を皆であげて、ノンちゃんのお通夜を致しました。思い出話で、お弁当の鳥のから揚げを盗み食いされ、それからノン君の大好物は鳥のから揚げだということがわかりました。遺体の前には病気で食べれなかったてんこ盛りのから揚げが供えられていました。うちのスタッフは心が優しい人たちばかりです。私の自慢のスタッフたちです。こんな人たちに面倒を見てもらう動物達は幸せだと思いますよ。