肛門狭窄が原因だった下痢症の猫に肛門形成術

9歳の猫が何ヶ月か前より、いつもゆるい便をしてお尻を汚しているという主訴で来院した。長毛の猫だったため、乾いた糞と被毛で肛門部が隠れていて飼い主は気がつかなかったようだが、肛門がかなりの狭窄をしていて、鉗子の先がやっと入るくらいの狭さだった。(写真①)また触診でもある程度便秘しているのは分かったが、レントゲンを撮ると腹部の写真で結腸内に大きな硬そうな糞塊がいくつもあることが分かった。(写真②) そこで分かったことは肛門が何らかの原因で狭窄したために、便が停滞してしまい、弁の隙間を通過する柔らかい便だけが、出ていたと、考えられる。

飼い主の方と相談の結果、狭窄部を切除し、ここに肛門形成術を実施することになった。写真③が狭窄部の切除をしているところ。写真④は狭窄部を切除し終わったところ。写真⑤と⑥は直腸粘膜と皮膚を縫合しているところ。写真⑦は術後の肛門(保定のため尾を上に引っ張っているため戻すと形はほぼ正常になる)写真⑧は抜糸直後。

写真①          写真②

 

 

写真③         写真④

写真⑤                               写真⑥

写真⑦                                   写真⑧

病理組織検査結果:狭窄していた肛門の組織は表皮に広範囲の自潰、潰瘍化し、表皮や粘膜の脱落領域は浅層から深部に炎症性肉芽組織の増生が見られた。つまり何らかの原因で感染などの炎症が起きて、肛門周囲の炎症や潰瘍により狭窄を起こし、二次的に糞塊が詰まってしまって、便秘をしたことにより、隙間を通れる軟便の排出が起こったと考えられる。 

術後は緩下剤を使用し、排便しやすいようにし、12日目に抜糸を終え、その後は順調に排便し、たまにトイレ以外のところに糞を落とすくらいまで改善した。

 

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