11歳半のゴールデンレトリーバーのセルトリー細胞腫

耳から汚れが多く出る症状と被毛が薄くなったこと、そしてやや多飲多尿が気になって来院した11歳半のゴールデンレトリーバー。身体検査をすると全身の被毛が薄く、ほぼ全ての乳頭が肥大しており、皮膚は全体に肥厚気味、そして左の睾丸が9cm程に腫大し、右の睾丸は逆に萎縮していた。耳は中耳炎、被毛の薄いのと皮膚の肥厚や乳頭の肥大は精巣腫瘍のよるホルモン異常から起っているものと考えられた。多飲多尿はルーチンの血液検査でほぼ正常だったため、尿検査をしないとわからないが、恐らく腎機能低下がありそうだ。中耳炎も慢性化していたため、耳道洗浄が必要なのと皮膚の病変は睾丸の腫瘍が原因と思われたため、全身麻酔下で睾丸摘出と完全な耳道洗浄を実施した。

摘出した睾丸の病理組織検査結果:左精巣はセルトリー細胞腫で潜在悪性腫瘍といわれ、約10%が局所リンパ節や内臓臓器に転移が起るとされている。また1/3例でエストロジェン(女性ホルモン)過剰症が起り、反対側の精巣萎縮、対称性脱毛、乳房発育などが認められるので、臨床症状は一致している。また右精巣はやはり腫瘍性変化は無く全体に萎縮していた。腫瘍細胞がリンパ管や静脈内にわずかに浸潤していたということなので、今後は転移に注意が必要だ。一般的に精巣腫瘍の転移は手術後半年から1年で起ることが多い。

上の写真は術前の睾丸の状況と腹部全体の乳頭の異常がわかる。中段は摘出した2つの精巣で下は腫瘍化した精巣の割面を示している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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