若い大型犬がご主人の革のベルトを呑み込んでしまったという事で来院した。内視鏡で1時間半以上かけて取り出した。ベルトは13個に喰いちぎられていたため、摘出に苦労した。開腹手術による胃切開であれば、30分ほどで終わっていたと思われますが、以前に一度タオルを呑み込んだことがあり、胃切開しているので、できるだけ内視鏡による摘出処置を希望していた。
内視鏡での所見と摘出したベルト片
若い大型犬がご主人の革のベルトを呑み込んでしまったという事で来院した。内視鏡で1時間半以上かけて取り出した。ベルトは13個に喰いちぎられていたため、摘出に苦労した。開腹手術による胃切開であれば、30分ほどで終わっていたと思われますが、以前に一度タオルを呑み込んだことがあり、胃切開しているので、できるだけ内視鏡による摘出処置を希望していた。
内視鏡での所見と摘出したベルト片
1例目は雌の6歳のラブラドールレトリーバーで前胸部にできた腫瘤が細胞診で肥満細胞腫と診断した。但し、肥満細胞の悪性度はそれほど高くなかったが、皮膚に割合余裕のある部位だったため、手術法は縦横2㎝のマージンと深さは筋膜までの切除とした。また浅頚リンパや腋下リンパの腫大はなかったので、リンパ節郭清はしなかった。2例目は7歳の雄のラブラドールレトリーバーで口唇部にできたやはり肥満細胞腫だった。ただ下顎リンパ節がやや腫大していた為、針生検(FNA)をした結果、複数個の肥満細胞が検出されたので、リンパ節郭清を実施した。一般的に口唇部に発生する肥満細胞腫は比較的悪性度の高いものが多いとされているため、より拡大手術をすることとした。従って口唇の全層切除を実施した。整形上やや変形した顔つきになることと下顎の犬歯が上唇に接触するため犬歯を削るようにしたが、飼い主の方の許容範囲の結果で満足が得られた。
写真は上段から順に1症例目と2症例目の手術中と手術後の状態を示す。
9歳のビズラが最近食欲が減退、元気が無いという事で来院。触診にて中腹部にマス様のものを触知、粘膜色は貧血を呈していたため、ルーチン検査として血液検査、X線検査、エコー検査を実施。結果は貧血と白血球増多(好中球・単球の増加)および血小板の低下が見られたため、DIC(播種性血管内凝固症候群)が始まってきている可能性があった。凝固因子もいくらかの異常があったため、DICの予防に低分子ヘパリンを使いつつ、まずは輸液とすぐに輸血を実施した。X線検査とエコー検査にて腹腔内に液体(血液)が貯留していたのと、脾臓の大きなマスと肝臓内の2か所に直径7mmと1㎝の低エコ―のマスが確認できたため、輸血をしながらの脾臓の全摘出と肝臓の部分切除を行なった。術後の経過は良好で5日目にはほぼいつも通りの食欲元気の回復が見られた為、退院となった。但し、病理組織検査結果は脾臓・肝臓共に腫瘤は血管肉腫ということで、恐らく脾臓原発の血管肉腫で、肝臓転移という状況なので、進行度も早く、同じような状況が短ければ1か月以内、長くても2~3か月以内に起こる可能性が高い。いずれにしても短い期間かもしれないが、良い状態のうちに家族の方達と一緒に精一杯楽しい時間を作って、良い思い出を作って欲しいと願うばかりです。
写真は脾臓のエコー検査と術中と術後の摘出した脾臓の血管肉腫(腫瘍が破裂して出血していた部分が分かる)
10歳の日本猫が食欲不振、体重減少で来院。触診にて腹腔内のマスを触知。血液検査ではHCT26.6%で再生性貧血、好中球と単球の増多以外には異常なし。X線検査では胸骨リンパ節の腫大、脾臓の腫瘤が認められ、エコー検査でも脾臓のマスが確認され、脾門部のリンパ節の腫大が認められた。脾臓のエコーガイド下による針生検で、細胞診を行った結果、リンパ腫であることが判明。飼い主の方とご相談の上、後日HCTが22.1%まで下がったため輸血の準備をして、輸血をしながらの脾臓摘出手術となった。病理組織検査の結果は悪性リンパ腫。高グレード(低分化型)リンパ腫で、B-cell由来。基本的に根治は困難だが、化学療法で延命が可能な腫瘍だ。脾臓及び悪性リンパ腫手術後10日目に抜糸と同時にビンクリスチンという化学療法剤を開始。現在までに6回の投与を実施しているが、大きな変化は認められていない。下の写真は術中及び術後の脾マスの所見で、脾臓の腫瘤の漿膜面が壊死により、破裂しており、そこから腹腔内に出血していたと思われる。
14歳のケリーブルーテリアが左側頚部の表皮に大きめで盛り上がった腫瘤を以前から気付いていたが、色々な事情があって来院が遅れてしまったという事で診察に来られた。腫瘤の大きさは4cm程になっていたが、表皮に形成されており、針生検による細胞診では円形からやや不定形の細胞が存在し、核は円形から楕円のものが多く、2核の細胞の存在や核分裂像も散見された。細胞は一見、組織球のように見えたが、やや悪性と思われるものもあったので、飼い主様と相談し、切除生検をすることになった。但し2㎝マージンを厳守し、深部も筋膜まで切除することとした。その時の病理組織検査の結果は組織球腫だった。その結果を見て、飼い主様共々安心していたが、それから2か月後になり、手術した部位のすぐ近くの皮膚に8㎝にも成長した腫瘤に気づき来院したが、すでに右側の浅頚リンパ節付近にも4㎝ほどの腫瘤が触知された。X線検査もしてみたが胸部・腹部共に特に異常が認められなかった。その日の腫瘤の針生検による細胞診では異型性が激しく、大小不同は明らかで、巨大な細胞で核が5つほどあるものや、核分裂像がかなりみられるようになっていた。そこで現在の症状や細胞診の結果を病理医にお知らせし、もう一度組織切片を評価していただくよう依頼した。その結果、診断名はランゲルハンス細胞組織球症ということだった。ランゲルハンス細胞は表皮内に存在する組織球系細胞で、この細胞に由来する増殖性疾患には組織球腫とランゲルハンス細胞組織球症という事になるそうだ。初発病変が組織球腫に類似する悪性疾患のことをまとめてランゲルハンス組織球症と解釈しているという事だ。先日の内科学アカデミーで「組織球肉腫に挑む」というタイトルのセミナーがあった際に、東京大学附属動物医療センターの血液腫瘍内科の大参亜紀先生に質問してみた結果、この疾患が進行すると皮膚に限らずリンパ節や内部臓器にも転移を起こし、抗がん剤治療を実施しても2~3か月の生存期間になることが多いというご回答を頂いた。化学療法としてはCCNUを基本に使用し、効果がはっきりしないようなら他の抗がん剤を使ってみることになる。14歳と高齢で治療後の生存期間がかなり短いことから、飼い主様も積極的な治療は望まれないかもしれない。
上の写真(下段)は再発した左肩部と右浅頚リンパ節付近の腫瘤(どちらもランゲルハンス細胞組織球症の転移と思われる)
7歳のチワワが健康診断で来院されたが、一般状態は良好で、何の症状も見られなかった。シニア犬の一通りの身体検査で、まず腹部触診で腹腔内にマスが触知できた。また血液検査とレントゲン検査で左腎が大きく腫大していることが分かり、エコー検査では腫大した腎臓の内部(皮質と髄質)の構造の変化や腎血管の増加等が見られた。さらに針生検の細胞診では悪性と思われる上皮系腫瘍細胞が多く見られた。飼い主様と相談の結果、腫瘍化した左腎の摘出手術を数日間の点滴等の治療の後実施することになった。術前には周囲組織の癒着や血管を巻き込んでいないかなどのチェックのためCT検査も行った。病理組織検査の結果は腎細胞癌で、核の異型性や核分裂像も多く見られたとのことで、今後の再発や転移に厳重な経過観察が必要である。下の写真は分かりやすい画像なので腹部のX線像と腎臓のCT画像を示す。
上の写真は術中及び摘出した腎蔵(腎細胞癌)
飛べないカルガモが逗子市役所裏にいて、保護され当院に連れてこられた。症状は左の翼が下がっており、頭部と頚部が上げられず地面にお辞儀をするような状態だった。また胸部の皮膚が5cm四方くらいの擦過傷と一部欠損部があり、出血をしていた。骨折に関しては上腕骨が複雑粉砕骨折をしていた為、手術は不可能と判断した。また左目の瞬目反射が欠損しており、左耳の内部に出血があり、頭部損傷がかなり強かったことを示していた。弱っている様子でしたので、皮下輸液と複合ビタミン、ステロイドの治療を開始した。治療後翌日には根気よく水に浮かしたフードや野菜類を、時々急に意識が戻ったかのように食べ出すようになったので、短時間でも食べる意欲ができのかもしれないので、頻回に体を支えてあげながら、食事を与えている。何とか体力が戻れば、厚木の動物保護センターに連れて行って、その後の治療をお願いするつもりだ。
右の写真は保護中のカルガモ。
中年のゴールデンレトリーバーの頚部が腫れてきたという主訴で来院された。元気や食欲はあり、他の症状は何もなく、血液検査上も大きな異常はなかった。腫瘤の針生検(ニードルバイオプシー)をした結果、非上皮系の悪性腫瘍であることは分かったので、次は飼い主の方とのご相談で切除バイオプシー(腫瘍の外科手術による摘出)を実施することになった。下顎の深部まで腫瘍が入り込んでおり、周囲の浸潤があった為、完全切除にはならなかったが、このことについては飼い主の方のご承諾の上実施した。切除後の病理組織検査は悪性神経鞘腫でしたので、今後の再発は確実にあり得るため、化学療法を選択するか、自然療法やサプリメントでコントロールしていくかの方針をご相談した結果、自然療法をご希望されたため、そちらのあらゆる療法を駆使して治療していくことになった。写真は腫瘤の部位と手術中の経過並びに摘出した腫瘍を示している。
若いフェレットが食欲廃絶、嘔吐、元気消失で来院、触診で何か小腸に触れる異物らしいものが物が存在するが、X線検査とエコー検査で確定診断は下せなかったが、静脈輸液による点滴で治療後、手術に踏み切った。開腹により空腸付近に異物を確認、小腸切開により異物を摘出、異物は飼い主も分からなかったが、スポンジの固くなったようなものなので、ビーチサンダルの一部のような固さのものだった。
中年齢の大型犬が急に立ちっぱなしで動かなくなり、急にお腹が膨れて呼吸が早くなってきた症状で夜間救急動物病院に行かれた。診断は胃捻転。胃ガスを抜く処置をして、輸液等の救急処置をして、翌朝当院に来院。その時点でもほとんど動けない状態だった.X線検査をして胃がほぼ180度の回転をしていた為、輸液をしすぐに手術になった。まずは胃チューブを入れてガス抜きをした後に開腹し、胃の漿膜から粘膜下織までをフラップ上に剥離し、これを腹壁にトンネルを作ってそこをくぐらせて元の位置にフラップを戻して縫合する。最後にもう一度胃の漿膜と腹壁が密着するように補充の縫合をして、閉腹。あとは通常の皮下織と皮内及び皮膚縫合となる。写真はガスを外から抜いて胃チューブでガス抜きをしてからの開腹時の写真。