「インフォームドコンセントの大切さ」

先日、飼い主の方から以前他院で亡くなった猫さんについてのセカンドオピニオンを求められ、1時間以上かけて今までの経緯を伺ったり、私の意見を述べたりしました。お話を伺ってまず感じたことは獣医師の説明不足です。治療に関しては決して間違った治療をしていませんし、検査や診断も的を得ていました。ただわずかな治療期間で検査結果が悪化したことで、自宅治療に切り替えた若い勤務獣医師の判断と退院時の院長の意見が異なっていたことによる飼い主の方の不安が1つ。そしてもう1つは別の病院に転院して入院治療した際の検査結果と治療内容の説明がその獣医師から十分成されていなかったことにより、院内で死亡した原因の説明が飼い主に理解し難いものになってしまったということです。その病院では検査を毎日のようにしていたので、その都度その変化について説明していれば、死因は心筋炎の合併によるものというのは明らかだったでしょうし、理解も得られたのではないかと思います。

我々獣医師は常に飼い主の方とコミュニケーションをとり、十分な説明をし、今後の治療方針などを相談しながら、飼い主の方の納得の上、治療を進めて行きます。若い獣医師は経験を積んで成長していきますが、初めは勉強ばかりで”頭でっかち”になってしまう傾向があり、コミュニケーションをとるのが苦手な先生も少なくありませんので、我々先輩獣医師がインフォームドコンセントの重要さや丁寧な説明に心がけるような指導をしていく必要があると、今回の件でなおさら痛感致しました。

 

 

長年お世話になった英国人とのお別れ会

家族ぐるみでお世話になっていた英国人が5月に母国のイングランドに帰国することになりました。鎌倉に20年くらい生活していた方で、私や家内も英会話でお世話になり、娘達もお世話になり、2代に渡ってお世話になっていた方でした。感謝のきもちで昨晩お食事会をしましたが、10年以上前の思い出話などに花が咲き、歌舞伎や薪能を観たり、色々な日本食を食べ歩いたり、日本の色々な古都を散策したことを懐かしそうにお話してくれました。日影茶屋さんのこの日の特別なお食事に感動していただき、離れの建物も気に入って、写真に収めておりました。また大広間にあったうちの祖父の金子堅太郎の直筆で”溪水堅”の号が入った大きな扁額がかかっていたことにも驚かれていました。  
 

 

近所の土手に”つくしんぼ”

いつもの散歩コースの途中で見つけた見事な数の”つくしんぼ”思わずカメラに収めてしまいました。桜も散り始め、土筆も十分穂っきてスギナになってきていましたし、春もすぐに通り過ぎて行きそうですね。   

 

 

ビルバック社の新製品(抗生剤)のプレゼンと意見交換

昨日、都内のホテルで開催されたビルバックのこれから発売予定の抗生物質に関するプレゼンテーションとこの製品に関する開業獣医師の意見や感想を話し合うミーティングに参加してきました。フランス・ビルバック社のナタリー・プレさんの説明と関東圏代表の7名の開業獣医師の意見交換でしたが、日本の獣医師のレベルや実情があまりご存知なかったようでしたので、会社としてはとても参考になったのではないかという感じがしました。  
 

国の指定名勝・三溪園の「観桜の夕べ」を楽しんできました。

今年の桜は開花が早まり、三溪園の「観桜の夕べ」という夜桜を観るイベントが3月29日から4月7日までだったものが、3月23日からに日程変更になった。そこで昨日午後の休みを利用して三溪園に行ってきた。園内には古い重要文化財の建造物が点在し、庭園も建物にマッチした趣のある素晴らしいものばかりでした。夕方からライトアップされた三重塔や桜が浮かび上がり、幻想的な雰囲気まで醸しだしていました。私が撮ったいくつかの写真をアップしてみます。

Dr.Canapp(キャナップ先生)の整形外科学

15日~17日の3日間アメリカ・ワシントンにあるAmerican College of Veterinary Sports Medicine & Rehabilitation という獣医スポーツ医療とリハビリテーションの整形外科専門の獣医師のセミナーに参加してきました。ここでは整形の症例を内科・外科・理学療法、更には再生医療も日常的に応用して、すぐに外科手術をするのではなく、例えば、跛行の原因が意外に腱や筋肉にある場合が多いのですが、その場合には内科治療や理学療法を駆使していくことで、ほとんどが改善しますし、それでも治らなければ幹細胞や多血小板血漿の注射による再生治療をし、なおかつ上手く治らない場合に外科手術をするというやり方で、とにかく元の解剖学的構造や機能に戻すことを主眼に治療をしている。この考え方は何でもかんでも損傷した部分を外科手術で治すというやり方をしている外科医には特に勉強して欲しいと感じました。またそこでは手術に関しても出来るだけ小さな傷で痛みも最小限で済む最小侵襲手術を実施しています。関節鏡下手術がそれです。当院でも関節鏡手術装置を近いうちに導入して整形外科の長澤先生が実施することになりますので、ご期待下さい。

 

北京農学院(大学)教授・陳武先生と北京の動物病院理事長・曹さんと日本に留学中の学生

9日の夕方北京農学院獣医学部教授の陳武先生と北京に10軒の分院を持つ動物病院の理事長(presidennt)曹さんと日本獣医生命科学大学の中国からの留学生が当院に見学にいらっしゃいました。陳先生は私が10年程前まで中国伝統獣医学国際研修研究センターで7年間毎年短期留学して中医学(基本から中草薬・鍼灸学など)を勉強し、小動物臨床中獣医学高級研修研究コースを終了させていただいた時からずっとお世話になっている教授です。当院の中獣医学療法の専任ディレクターでもあります。写真左から二番目が陳教授。私の右が曹さん。

”地球の肺”を守る日本人 長坂 優氏

ロータリクラブのインターシティーミーティングが3月2日鎌倉プリンスホテルで開催された。合同例会後の記念講演で自称”アマゾンの百姓”として農業を営み、アマゾニア森林保護植林協会会長でもある長坂氏の講演内容をご紹介しましょう。1990年に日本から集団の開拓移民がアマゾンの熱帯雨林の中に入って生活をする事になったが、当時の多くの移民のうち現在生き残っている人は長坂氏1人だけだそうで、その過酷な開拓するまでの様子を、笑いあり涙ありのとても感動的なお話をしていただきました。そしてご本人が開拓で体験した生活から3つのことが分かったそうです。

①アマゾンの熱帯雨林の中で生活するのに「1人では生きられない」ということ。:2年間全く1人で生活して、人と会うこともなく、言葉を喋らないでいると、人は頭が狂ってしまうというのです。奇跡的に出会った日本人医師が教えてくれた、いいかげんな食べ物、野草とココナッツの実、などで生きていたこともあったし、マラリアに罹り、毒蟻に刺された時の蟻酸がマラリアから救ってくれたこともある。

②そこで生活していると「人は食べるために生きるのか、生きるために食べるのか分からなくなってしまう。」ということ。

③大切なものは目に見えないものだということ。日光の温かさ、空気の味と香り。ブラジルの国土の65%が熱帯雨林であり、ここの森林が産生している酸素は地球上の空気の1/3にもなるそうです。

黄色人種とりわけ日本人は、皮膚の黄色と黒い瞳そして夏の暑さ、冬の寒さに耐えられる厳しい自然環境に耐えられる体質があるので、もっと自信を持って欲しい、さらにこれからの日本の若い人は度胸と実行力がある人間になって欲しいと付け加えた。

私達は食事や水に困らない生活をし、電気による生活で快適に過ごしているが、それが当たり前になってしまっており、長坂氏の経験した究極のサバイバル生活のお話をお聴きしたことで、自然の偉大さ・大切さに気付かされましたし、人は他人とのコミュニケーションによる社会生活がとても大切であることも再確認させられました。

 

日本獣医内科学アカデミーに出席して。

23日と24日の2日間、47の内科系学会・研究会が合同で開催される日本獣医内科学アカデミーに出席してきました。

今回は最近当院で特に多くなってきたリンパ腫や慢性/急性リンパ球性白血病について深く知るために集中して2日間、これらに関連した内容のみのセミナー・症例検討・シンポジウム・ディスカッションに出席してきた。連日朝9時から夕方6時半までの勉強でしたので帰宅してからやや頭痛がしてきました。

最新情報として、海外ではすでに実際の動物の臨床に応用されているリンパ腫を完治させるための治療に必要な骨髄移植についての講演を聴いてきましたが、東大の佐藤先生が簡単で、副作用の少ない、しかも費用をあまりかけない移植プロトコールを作成し、今後検証していくことになるそうです。また人の骨髄移植の第1人者である国立がん研究センターの田野崎先生も動物の骨髄移植に関してご協力をいただけるということですので、心強い限りです。

しかし、まだいくつかの課題が残っています。

1.本当に造血幹細胞移植で必要な骨髄の破壊的治療安全に行なえるか?

2.粘膜障害は耐容可能か?

3.緻密な輸血管理の体制はできているか?

4.最低1週間に及ぶ「好中球0」における感染対策が可能か?

5.幹細胞採取の技術開発は?

6.幹細胞保存の技術開発は?

しかしこれらをクリアーしていけば、動物のリンパ腫の完治も夢ではなくなります。これからの臨床試験の結果に期待したいと思います。

 

 

葉山周辺の野鳥

先日2日連続して、怪我をした野鳥が保護されて来院した。コジュケイ(写真右)は保護した方がおっしゃるには猫に襲われたらしいとのことでしたが、この鳥は地上で餌をあさる習性があるため、やはりそれが原因だと思います。胸の皮膚と胸筋が裂けて出血していたため、消毒と抗生物質の投与をしたらその後非常に元気になったので、3日目には金沢自然動物公園に引渡し、あとの処置をして頂くことになった。コジュケイの保護をした翌日に来たのが、トンビに襲われて落下したトラツグミ(写真左)で、残念ながら運び込まれた時点で呼吸が止まってしまいました。胸に大きな穴があいており、これが致命傷になったようです。これらの鳥は葉山と秋谷で保護されており、このようなあまり見かけない野鳥が近頃増えてきているということは、冬になると餌を求めて人里に降りてくるのですが、やはり山の自然が少しづつ減ってきていることも原因しているのではないでしょうか?