ラブラドールレトリーバーが犬舎の金属製の扉を咬んで、犬歯を折ってしまった。歯髄が露出しているが、まだ新鮮な生活歯髄なのですぐに歯冠を歯科セメントで埋めてあげることでしばらく普通の機能を維持できるので、歯科処置をした。
ラブラドールレトリーバーが犬舎の金属製の扉を咬んで、犬歯を折ってしまった。歯髄が露出しているが、まだ新鮮な生活歯髄なのですぐに歯冠を歯科セメントで埋めてあげることでしばらく普通の機能を維持できるので、歯科処置をした。
7ヶ月齢の雌のラブラドールレトリーバーが仔犬の時から尿を漏らしていたということで精密検査をご希望された。そのためルーチンの血液検査と尿検査および血管造影剤によるX線造影検査を実施した。血液検査結果はほとんど異常が無かった。尿検査ではやや潜血反応があったくらいで、そのほかは異常が無かった。X線検査による尿路造影を見てみると右側の尿管は膀胱三角部に開口しているが、左側の尿管は膀胱壁と平行に走行し、尿道の中間の辺りまで並行しているのが分かった。つまり左側の異所性尿管があったため、腎臓から出ている尿管が膀胱を素通りし尿道に開口し、常に尿を漏らす結果になっていた。この後は大学病院の泌尿器外科の専門医に尿管を膀胱に置換する手術をしてもらうことになる。
6歳半のラブラドールの頭頂部の皮膚に大小の腫瘤が存在、最近増大傾向になってきたので見て欲しいと言うことで来院。大きい腫瘤のニードルバイオプシーの細胞診では紡錘形の非上皮系腫瘍のような細胞が見られたため、万一悪性腫瘍だといけないので、摘出手術をお勧めした。摘出手術後の病理組織検査結果は小さい腫瘤は脂腺腺腫という良性腫瘍。大きい方が炎症性偽腫瘍。この病変はどんなものかというと、反応性、炎症性の組織像を背景に紡錘形細胞の増殖を示す腫瘤性病変で、非腫瘍性病変と考えられていたが、近年の研究で、この診断名を用いる病変の中には筋線維芽細胞の腫瘍性増殖が含まれていると考えられている。動態は明らかではないが、良性もしくは低悪性度の腫瘍性病変を否定できないため、念のため経過観察が必要だろう。
1例目はシーズー9歳で飼い主の方がたまたま口の中にできものが出来ているのを見つけて来院した。出来方としては悪性のものには見えなかったので、切除バイオプシーとして対処した。病理検査では線維腫性歯肉腫で、これは歯根膜に由来する良性の腫瘍性病変と考えられている。またこの病変は従来、骨形成性歯肉腫と呼ばれていたが、現在では線維腫性歯肉腫の一組織亜型と考えられているそうだ。
2例目は3歳半の日本猫が口が汚れるので口内を見たら、歯肉に赤い大きなできものがあるのに気づいて来院した。X線検査で腫瘤の下の歯根部の歯槽骨の融解像が見られため、炎症性の可能性と腫瘍の可能性もあった。まずは針生検をしたかったが、嫌がって口を開けさせない子だったので、麻酔下で切除バイオプシーとした。病理組織検査結果では炎症性肉芽組織、ただし、多数の形質細胞の浸潤が認められることから、猫形質細胞性口内炎の関与の可能性は否定できないとしている。
耳から汚れが多く出る症状と被毛が薄くなったこと、そしてやや多飲多尿が気になって来院した11歳半のゴールデンレトリーバー。身体検査をすると全身の被毛が薄く、ほぼ全ての乳頭が肥大しており、皮膚は全体に肥厚気味、そして左の睾丸が9cm程に腫大し、右の睾丸は逆に萎縮していた。耳は中耳炎、被毛の薄いのと皮膚の肥厚や乳頭の肥大は精巣腫瘍のよるホルモン異常から起っているものと考えられた。多飲多尿はルーチンの血液検査でほぼ正常だったため、尿検査をしないとわからないが、恐らく腎機能低下がありそうだ。中耳炎も慢性化していたため、耳道洗浄が必要なのと皮膚の病変は睾丸の腫瘍が原因と思われたため、全身麻酔下で睾丸摘出と完全な耳道洗浄を実施した。
摘出した睾丸の病理組織検査結果:左精巣はセルトリー細胞腫で潜在悪性腫瘍といわれ、約10%が局所リンパ節や内臓臓器に転移が起るとされている。また1/3例でエストロジェン(女性ホルモン)過剰症が起り、反対側の精巣萎縮、対称性脱毛、乳房発育などが認められるので、臨床症状は一致している。また右精巣はやはり腫瘍性変化は無く全体に萎縮していた。腫瘍細胞がリンパ管や静脈内にわずかに浸潤していたということなので、今後は転移に注意が必要だ。一般的に精巣腫瘍の転移は手術後半年から1年で起ることが多い。
上の写真は術前の睾丸の状況と腹部全体の乳頭の異常がわかる。中段は摘出した2つの精巣で下は腫瘍化した精巣の割面を示している。
雑種猫が交通事故で全く動けない状況で来院した。ショックの状態だった為、静脈確保により急速点滴、また呼吸が荒く努力呼吸をしており、右側の心音が聞き取り難かった為、胸腔内の液体の存在か横隔膜ヘルニアを疑った。呼吸が落ち着くまで酸素室で酸素化をしてから、X線検査をしたところ右側の横隔膜ヘルニアが判明。また骨盤の複雑骨折と尾椎の骨折もあった。血液検査では肝酵素の上昇から肝臓の損傷が考えられた。血尿もあり、泌尿器の損傷もあったが、膀胱破裂や尿道の裂傷は無かった。翌日に再度血液検査をしたところヘマトクリットの数値が一晩で15%も下がったため、輸血を実施した。状態が安定したので、輸血をしながらまずは横隔膜ヘルニアの修復手術を実施。術後の経過も良かったので、さらに2日後(大晦日)に骨盤骨折の整復手術を実施(DCPと螺子を使用)。本日は鎮痛剤もしっかり使用しているせいか落ち着いていた。もともと緊張し易い性格な為、食事が食べられないことが想定されたので、経食道チューブを装着したので、本日はチューブを介しての給餌となったが、嘔吐もなく上手く受け入れてくれた。今後は尾の動きが無く麻痺しているので、この状態が続くようなら将来を考えると断尾も検討しなければならないでしょう。写真①②:胸部X線写真の術前 写真③④:胸部X線写真の術後 写真⑤:術中の腹腔側から横隔膜の穴から胸腔の肺が見える 写真⑥:骨盤の骨折部位のX線写真・腹背方向で術前術後 写真⑦:骨盤の骨折部位のX線写真・右下側方の術前術後 写真⑧:尾椎の骨折部位を示したX線写真 写真⑨:骨盤骨折の修復手術術中写真⑩:骨盤骨折の手術中の情景
写真①②
写真③④
写真⑤
写真⑥
写真⑦
写真⑧
写真⑨
写真⑩
13歳半の雑種犬の右大腿部皮下に飼い主が偶然腫瘤を発見して、来院した。まず院内でニードルバイオプシーにて細胞診をしたところ、非上皮系の悪性腫瘍であることが判った。そこで急遽、この腫瘍を切除することになった。切除した組織は病理検査に送り、1週間ほどで結果がわかった。 病理組織検査結果は起源不明の肉腫ということだった。細胞診で悪性腫瘍であることがわかっていたので、マージンは周囲2cm以上とり、深さに関しては筋膜を剥離切除するところまで実施した。それが功を奏して病理検査の所見にマージンでの腫瘍細胞の脈管浸潤は見られなかったとあり、まずは良い結果でした。ただ数ヶ月後か1年後かわかりませんが、周辺から再発することもあり得るでしょう。写真①②は外観(盛り上がっている腫瘤)写真③は切除直後の切開創(大きな切除で深さ方向は筋膜切除まで実施)写真④は切除した腫瘍の割面を示す。
写真①②
写真③④
6月頃から食欲が低下していたが、12月中旬から食欲がなく1日2~3回嘔吐するようになった。体重は当時5.5kgだったのが現在4.95kg。体温39.7℃で白血球数が26000と高く特に好中球が高かった。その他の血液検査結果は異常がなかった。触診で下腹部に柔らかめのマスが触知されたのでレントゲンとエコー検査をしたところ、右下腹部に楕円形の陰影(写真①②)、腸壁の肥厚と腸管内腔に突出したマス(写真③)を確認した。腸管の通過障害が疑われたため、開腹手術による腫瘤切除(写真④)を実施した。15cm程の腫瘤を含めた腸管(回腸)を切除(写真⑤)した。切除した腫瘤の割面(写真⑥)は腸管内腔に突出した腫瘤がわかる。
写真①②
写真③
写真④
写真⑤
写真⑥
病理組織検査結果は血管肉腫だった。猫の血管肉腫そのものが発生率が少ないが、小腸にできた血管肉腫はかなり珍しい。もともと血管の内皮細胞に由来する悪性腫瘍なので悪性度は高い。腹腔内の他臓器への転移や心臓など全く離れた器官や臓器に転移する可能性もある。予後には充分注意が必要と言える。
1例目はシュナウザーの前肢肢端が1週間位で急に増大したというもの。2例目はフラットコーテッド・レトリーバーの後肢肢端に感染症があり、抗生剤である程度治癒していたが、最近になって増大してきたと言うもの。1例目は爪周囲の悪性黒色肉腫(メラノーマ)で指の付け根から切断して腫瘍を切除。2例目はやはり爪周囲の細菌感染から二次的に起きたと思われる扁平上皮癌。
高齢のビーグルが1ヶ月以上に渡って、皮膚炎があると言うことで来院した。実際は毛で隠れていて分かりづらかったが、痂皮が数ヶ所ありその下は硬いしこりになっていた。血様の漿液が漏れているところもあり、慢性炎症の病巣だった。経過が長いため、手術による病変部の摘出をすることになり、硬結している部分全体を摘出したところ、病巣内中央に硬い異物が存在した。この異物は1cm5mm位の骨片のようなもので非常に硬いものだった。大きなしこりになった原因は異物が皮膚に刺さったことによる慢性の細菌感染による炎症が原因だった。