アメリカンショートヘアーの副腎皮質腺癌

11歳のアメリカンショートヘアーの健康診断をした際に、X線検査と超音波検査により上腹部の左腎内側のマス(腫瘤・約2.5cm)を発見し、マスの血行動態をカラードプラーで確認して針生検を実施した。細胞診の結果、全体に大きな細胞質をもつ円形の大型上皮細胞が散在していたが、場所によって核の大小不同、大型の核仁、核膜の異常、2核のものなどかなりの異型性があり、どれも上皮系の悪性腫瘍を示すものだった。飼い主の方との相談で、場所的には副腎の腫瘍の可能性が高いが、別のものかもしれないことを理解していただいた上で、試験開腹、切除可能なら摘出手術ということで、手術を実施した。写真は上から①超音波所見②開腹した時の腫瘤と左腎③バイポーラを使った止血と腫瘤の鈍性剥離④腫瘤に入っている動脈の結紮をしているところ⑤腫瘤の切除後⑥腫瘤の割面写真⑦病理組織検査結果

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫の股関節の成長板骨折整復術

飼い主が帰宅したら、1歳半の猫の左後肢の跛行に気付き救急病院に連れて行って検査をしてもらったが、原因がはっきりしなかった。当院で再度X線検査をさせて頂いたところ、股関節の大腿骨頭部の成長板骨折(写真①②)をしていることが分かった。手術方法は2つあり、骨頭切除かピンニングによる固定術があるが、飼い主の方はできるだけ正常な機能に戻してあげたいというご希望で、ピンニングによる手術をご希望された。但し、1ヶ月間の術後の安静は徹底する必要がある。特に高いところに飛び乗ったり飛び降りたりは禁忌となる。術中写真③④。術後のX線写真⑤⑥

写真①

 

 

 

 

写真②

 

 

 

 

写真③

写真④

 

 

 

 

 

 

写真⑤

 

 

 

 

写真⑥

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

石亀の甲羅の損傷部のハエウジ症

拾われた亀が怪我をしているという主訴で、来院。診察したところ、右側の1/4の甲羅が割れており、筋肉と肺の一部が露出しており、筋肉の筋間に感染症が原因のウジが寄生していた。きれいに洗浄消毒して、抗生物質を投与。しばらくこれを繰り返した後、整復手術を実施する予定だ。

二ヵ月後、亀の健康状態もよく化膿壊死した組織は完全にデブリートして正常組織ができていたため、修復用のセメントで甲羅を元の位置に戻して固定した。写真中ほどに掲載。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3歳の雑種犬の大変珍しい浅指屈筋腱脱臼の修復術

3歳の雑種犬がドッグランで遊んだ後から左後肢の挙上がみられ、ゆっくり歩行で跛行を呈し、早歩きになると挙上して3本足になってしまう。左踵骨の周囲の腫大があり、そこの内出血もあった。手術の同意が得られた為、整復手術となったが、切開すると踵骨のくぼみが浅くその靭帯が外側に脱臼していた。この脱臼の予防処置として螺子とピンを刺入してさらに補強をした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

猫の腹腔内に多発した消化管好酸球性硬化性線維増殖症

5歳の日本猫が食欲元気がないということで来院。体温は40℃と高熱で中腹部には3cm程のマスが触知された。以前3月に細菌性化膿性肉芽種性腸炎が回盲結口部にマス様病変を形成しており、病変部切除後、結腸回腸吻合術を実施したことがある。今回もそれの再発と考えられたが、X線検査やエコー検査後の試験開腹による探査で、腹腔内の腸間膜に広範性に多数の小マスと2~3cmのマスが数ヶ所存在し、腹水も貯留していた。細胞診では好中球とマクロファージがほとんどを占め、好酸球が散見された。一部の腫瘤を摘出し、病理組織検査をした結果は、細菌感染が原因の炎症性病変が線維芽細胞や膠原繊維の増殖を伴って、硬い腫瘤を形成していたことから、猫消化管好酸球性硬化性線維増殖症と推察されたとあった。なかなか耳慣れない病名だったため、大学病院の臨床病理の先生に伺ったところ、かなりの難治性の疾患で治癒は余り期待できないとのコメントだった。但し、2種類の抗生物質にステロイド剤を加えて治療する必要があるということで、細菌感受性テストの結果がマイナスと出たことから嫌気性菌にも留意した薬剤も投与しているが、一時は食欲もなくなったため、食道チューブを装着しつつ、強制給餌も行い、現在は元気食欲が出てきて、改善の兆候が出てきた。代替療法としてホモトキシコロジーなどを併用しているが、ここまで改善するのに1ヶ月近くかかっている。やはり難治性の極めて珍しい疾患の1つであろう。

写真①腹膜に粟粒性に存在する腫瘤

写真②2cm大の腫瘤

写真③膵臓に存在した腫瘤(鉗止の先)

 

下顎皮下に存在した異物(骨片)

中年の柴犬が2~3日前から歯が痛そうにして食べなくなってきたという主訴で来院した。左側下顎の皮下がやや腫大していたので、触診したところ、痛そうにしたためレントゲンで確認したところ、下顎骨に一部骨が増生しているように写っていた。どちらにしても精査するため全身麻酔下で口内をよく検査してみたところ、写真①に見られるような口角と口粘膜に潰瘍と穿孔創があり、口角の穿孔創から血様の膿が漏出してきたのと、そこから硬いものが顔を覗かせていた。実は骨片が粘膜から刺さって下顎の皮下にまで達していた。写真②は取り出した骨片。飼い主にお聞きしましたらスペアリブを数日前に与えたということだったので、その時に噛み砕いた骨片が口粘膜に刺入したと考えられる。

写真①         写真②

ゴールデンレトリーバーの中指骨の骨折整復手術

1歳令のゴールデンレトリーバーの前肢第4と第5中指骨の骨折を、ピンニングにより修復した(写真右が修復前、肥大の写真が整復後)軽めのギブスによる補強も実施し順調に治癒してきている。

8ヶ月齢のバーニーズマウンテンドッグの脛骨骨折の整復手術

庭に放して遊んでいて帰ってきたら、右後肢を跛行していたという稟告。X線検査にて、右の脛骨の大きな斜骨折があることが分かった。手術法はシンセスのロッキングプレートによる内固定法で行った。脛骨前面と側面に2枚のロッキングプレートを使用した。腓骨が骨折していなかった為、この骨がさらに支えてくれるので、これで充分な固定になった。写真①と③は術前のレントゲン写真、写真②と④は整復後のレントゲン写真。年齢が若いため1ヶ月でほぼ完治となるでしょう。

写真①        写真②

写真③        写真④

小腸内異物による閉塞と腸管破裂による腹膜炎を併発した犬

5歳の雑種犬が2~3日前から食欲不振、嘔吐が見られ、昨日から元気消失、飲水後にも嘔吐があるということで、来院した。血液検査では好中球の増多がみられ、ALPの上昇もあったが、その他の血液化学検査では異常がなかった。腹部単純X線写真では特に異常ガス像が見られなかったため、バリウム造影検査を実施した。下の写真は4時間後だが造影剤内服30分後から空腸の途中(円で示した部分)からバリウムが流れていない。また楕円で示した箇所には造影欠損を常に示していた。そこで何らかの空腸の閉塞を疑い、手術を実施したところ、開腹時(写真②)に腹腔内に血様の液体が貯留していることが判明。空腸を体外に露出させたところ(写真③・④)空腸遠位に異物が存在していた。また空腸の20cmほどの長さの色が黒っぽく変色しており、一部腸管が壊死しているところから腸内容物が漏出していた。そのため変色している部分を全て切除し、端端吻合をした。切除した空腸が写真⑤、取り出した異物が写真⑥。また別の空腸にもう1つ異物が触知されたため、切開摘出した。(写真⑦)手術が終わった時点の全体写真が写真⑧。術後は食事療法等により順調に経過、5日後には無事に退院となった。

写真①

写真②

写真③

写真④

写真⑤

写真⑥

写真⑦

写真⑧

 

 

 

猫の汗腺癌

14歳の猫の上腹部の皮膚の傷が数ヶ月も治らないという主訴で来院した。他院にて抗生物質や塗り薬を使っても治らず、最近少し広がって盛り上がってきていた(写真①)。当院で細胞診をしたところ、核と細胞質の比が大きく、細胞の大小不同があり、上皮系のかなり悪性度の高い腫瘍であったため、早期に手術となった。出来るだけの拡大手術をすることにした(写真②③)。病理組織検査の結果は、汗腺癌とソケイリンパ節の転移。既にリンパ節転移があったということは、肺やその他の臓器への転移もあり得るので、定期的検査などが必要だ。

写真①術前

写真②切除組織

写真③術後