猫の膀胱結石

  

 

膀胱内に大きな円形の結石が確認できる。この猫さんの一般状態があまり良くなく、血液検査結果でBUN(尿素窒素)やCre(クレアチニン)、電解質のKが高いことから、輸液を充分行った上で、膀胱結石の摘出手術を実施する事になった。

 

 
 4日後に膀胱結石の摘出手術を実施。上の写真は摘出した直径1cm程の2つの結石。この結石は成分分析をして、その結果により、どんな種類の石かそしてその石の予防に適した食事はどんなものが良いかを決定する。   

犬の腹腔内陰睾

     

陰嚢内に2つあるべき睾丸が1つしかない片睾丸(上の写真)または1つもなく、腹腔内に睾丸が滞留しているものを腹腔内陰睾(腹腔外で皮下にあるものを停留睾丸)と言います。どちらもそのままにしておくと、中年過ぎになって陰睾になっている睾丸が腫瘍化する確立が非常に高くなります。そのためできるだけ早期のうちに去勢手術をしておくべきでしょう。

 

 
  

左の写真は腹腔内の睾丸を摘出しているところ。右の写真は左が正常な陰嚢内の睾丸、右が腹腔内の睾丸で、こちらの方が異常に萎縮しています。そのため睾丸の機能は低下しており、交配には向きません。 

 

レーザーによる耳道壁の腫瘤切除

   
15歳の犬で以前、垂直耳道切開をしたことのあるビーグルですが、腫瘤から出血したり、耳道入口が汚れるということで、手術を希望されましたが、高齢な為、麻酔時間を最小限にしなければならず、完全切除にはなりませんが、レーザーによる切除としました。写真左は術前、右は術後。病理組織検査結果は、形質細胞腫という良性の腫瘍でした。但し再発の可能性は多少ありますので、定期的な診察をすることにした。  

猫の腎臓のリンパ腫

   

7歳の日本猫さんが元気食欲なしということで、来院しました。血液検査で腎臓の検査が中等度の異常、肝臓が重度の異常を示しました。触診でもレントゲンフィルム(上の写真)でも腎臓の腫大とやや凹凸のある形態がわかります。

 
   

そこで腎臓と肝臓の超音波検査と腎臓の針生検をしました。超音波検査では腎臓の腫大と皮質および髄質の構造が不明瞭、肝臓のわずかな腫大と胆嚢内の胆泥や胆管壁の肥厚、胆管の蛇行と血液検査結果から胆管肝炎の疑い。腎臓の針生検による細胞診では腎臓にはありえないほどのリンパ球及び幼若リンパ球が存在した(上の写真)結果から、この子の腎臓はリンパ腫というガンであることが分かりました。

 

骨髄検査が必要な病気

 

    重度な貧血(赤血球のPCVが15%)を呈した猫さんの血液塗抹標本で、総白血球数が3600(正常値10000位)で、その内好中球は2600と低い数値でした。また血小板も18000(正常値200000)と低値でしたので、骨髄内の赤血球系(赤芽球系)と白血球系(骨髄球系)そして血小板(巨核球系)の3系統を検査するために、骨髄生検による骨髄の細胞診を実施しました。

その結果、赤血球系(赤芽球系)と血小板(巨核球系)の細胞がほとんど見られず、白血球系(骨髄球系)がほぼ正常に近いことがわかりました。つまり赤血球と血小板が骨髄内でほとんど生産されていないということになります。この子の場合、赤血球のより若い段階で壊されていた。また更に血小板も元の巨核球が非常に少ないので、やはり同じことが起きていた。治療はステロイド剤や他の免疫抑制剤をより協力に使っていく事になる。

このように骨髄の検査は赤血球や白血球、血小板などの異常があるときに、骨髄の細胞診をすることで、骨髄内の血球のいわゆる生産工場のどの段階に異常があるかが分かることになります。

 

 

 

 

 

 

 
   

猫の重度の便秘症

1ヶ月以上下痢が続いていたと言う猫さんでしたが、ここ数日食欲も無く吐きだして、痩せてきたということで来院しました。上のレントゲン写真は側面から撮ったものですが、白っぽく太い部分が巨大な糞塊です。   

 

上の写真は特殊なカテーテルと微温湯を使った用手排便で巨大な宿便を取り除いた後のすっきりしたお腹。

便秘も重度になると硬い便と腸壁の隙間を通る軟便だけが出るようになります。さらに食欲不振、嘔吐などが起こり、極度に衰弱していきます。この子も体重が1キロも減っていました。

 

 

肝不全により凝固障害をおこし、失血性の貧血をおこした犬

   
 数年間に亘る慢性肝炎の治療をしていた犬が凝固系の異常をおこし、重度の歯槽膿漏による動揺歯から、大量の出血をして重度の貧血をおこした。その結果ビタミンK1や止血剤の投与、局所の血管収縮剤等で処置し、急遽、輸血を実施した。輸血は緊急を要したため、私の愛犬ローリー(ラブラドール・レトリーバー)から供血し、クロスマッチテストでOKとなり、200ccの輸血となった。翌日には出血が止まり、血色も良くなり貧血が改善。元気も食欲も出てきたため、夕方には退院の運びとなった。

慢性の進行した肝疾患では、時折、血液凝固系が異常になり、出血傾向が強くなることがあります。重度になる程、頻繁な定期検査と血液凝固系の検査もしておく必要があります。

 

重度の黄疸を伴った劇性肝炎

   
   

黄疸の進行した典型的な症状(上の写真)は皮膚の露出しているところは全て黄色くなっている。またあらゆる可視粘膜(口腔粘膜・歯肉・結膜など) も黄色くなる。尿の色も黄色からオレンジ色を呈する。肝炎の症状は元気・食欲廃絶、嘔吐、多飲多尿、軟便などですが、進行した状態でない限り、あまりはっきりした症状がありません。ただ感染性の肝炎であれば発熱があるかもしれません。この子は胆管閉塞を伴った重度の胆管肝炎でしたので、肝酵素のALTやAST、ALPは正常値より一桁多い高値になっていました。肝臓の病気は”沈黙の臓器”といわれているように、よほど進行してこないと症状がでません。そのため定期的な健康診断をしておけば、このようになる前に病気が早めに発見できて、早めの対処ができたと思います。

 

ストラバイト尿石の処方食を与えていた猫に膀胱結石

   
数年前に膀胱炎になり、抗生物質で改善しましたが、ストラバイト(リン酸アンモニウムマグネシウム)の結晶が多かったので、それ以来ストラバイトの予防の処方食を与えていました。ところが最近血尿が出るようになり、来院しました。左の写真は膀胱内に小さな結石が5~6個存在しているレントゲン写真です。右は膀胱内から摘出した結石です。これは蓚酸カルシウムという成分の結石でした。膀胱炎の治療をしていても血尿が治らないということで来院し、レントゲンと超音波検査をして膀胱結石があることが分かりました。ストラバイト尿石の処方食を与えていても、蓚酸カルシウムなど他の結石が形成されることがありますので、定期的な尿検査をお奨めいたします。  

 

 

外耳炎として長期治療を受けていた中耳炎の犬

    

外耳の汚れと毛を取った後、麻酔下で外耳道を観察した写真

 
    

左の写真は上の写真の毛と耳垢を特殊な鉗子でつまみ出しているところ。中央の写真は処置後。右の写真は中耳の中を洗浄と吸引の処置をしている。できるだけ外耳道や中耳をきれいにしてから、外耳薬と内服薬を使って治療しないと汚れたままではいつまでたっても改善しません。