針状の異物が2本胃壁に刺さっていたフレンチブルドッグ

 

   

 

4歳のフレンチブルドッグが2日前から嘔吐、今日になって頻回の嘔吐になったという主訴で来院しました。レントゲン検査(上の写真)で胃内に2本の針状の異物が存在することが分かり、1本は幽門の壁から外に突き出ているのが分かる。すぐに輸液と抗生物質の治療をはじめ、内視鏡(胃カメラ)により摘出する事になった。

 
   

 

左と中央の写真がそれぞれ胃に刺さっていた針状の異物。右の写真が内視鏡用の特殊な異物鉗子で 針の先端を掴んで摘出しているところ。

 

上の写真は胃内にあった異物で、上の2つがプラスチックの破片、下の2つが胃壁に刺さっていた金属の針状の異物(完全に錆付いている)

 

 

 

 

 

 

十二指腸の異物による腸閉塞(フレンチブル)

   

 

6歳のフレンチブルドックが4日前から食欲廃絶、嘔吐があるということで来院、レントゲン写真で小腸に異物が見られた。つぶれたボールのように見える(左の写真)。中央の写真は開腹した際の十二指腸、異物で膨れ上がっているが、一部腸管の色が非常に悪く、長時間の異物の停滞による血行障害で壊死をする寸前の状態。右の写真は取り出したプラスチック製のボール。

 
   

 

左の写真は膵臓がごく近くに存在する場所での非常に難しい手術を終えたところ。右の写真は切除した十二指腸(黒っぽく変色している)。その後は順調で本日3日目ですが、消化の良い食事を完食しています。フレンチブルも色々な異物を飲み込んでしまうことが多い犬種です。①普段から飲み込む可能性のあるものを与えない。②危険そうなものには充分注意してワンちゃんが届くところには置かない。

 

若猫の大腿骨複雑骨折の手術

 

 

5ヶ月の子猫が交通事故に遭い、大腿骨近位の複雑骨折となった。(上のレントゲン写真で大腿骨が4つに分離し骨折している)

 
 

 

左の写真が骨折部分に金属プレートを当ててサイズの調整をしているところ。右の写真は骨折手術から1ヶ月半のレントゲン写真ですが、既にネジが2ヶ所浮いているが、骨は以前より太くなって完全に癒合している。そのため本日プレートと螺子およびピンも取り除いた。

この猫さんはこれから里親に出すところだったノラ猫さんでしたが、結局当院で引き取って、うちの猫になることになりました。

 

6歳のゴールデンレトリーバーの術前検査

  

上は胃のクローズアップレントゲン写真ですが、胃の中央に円形の異物が見られる。

 

 
  

胃切開をしている写真ですが、胃の内部に黒っぽい円形の異物が顔を見せている。

 
  

これが摘出した6cm大の円形のボール、中身は充実性がある。

歯科処置と避妊手術をする予定で術前検査をしたゴールデンレトリーバーのレントゲン写真で、異物が見つかり、急遽、胃切開による異物摘出を同時に行なった症例ですが、飼い主の方はいつどこで飲み込んだのか分からないとのこと。しかも何の症状も無かったということです。この犬種は異物の誤飲が多い犬種ですが、術前の健康チェックで発覚した訳ですから、いかに術前検査の中にレントゲン検査を含めた検査が必要かが、この例でお分かりかと思います。

 
  

慢性の下痢と血便があったゴールデンレトリーバー

      

 

治療を受けていましたが、2ヶ月前から下痢気味で血便が時々出ていて治らなかったというゴールデンレトリーバーです。上は腹部のレントゲン写真ですが、下行結腸というところが常に狭窄していることが分かりました。

 
      

 

試験開腹と腸のバイオプシーを兼ねた開腹手術をしたところ、左の写真で結腸の壁が非常に硬く肥厚している部分がありました。中央の写真はこれを切除して腸の内側を見ています。これは如何にも悪性腫瘍と思われる肉眼所見でしたが、病理組織検査で血管や凝固系に異常が存在し、虚血性腸炎となり、慢性経過で腸壁の肥厚および糜爛と潰瘍を起こしたのではないかという病理医の所見でした。右の写真は脾臓にいくつもの黒っぽい腫瘤が突出して、いつ破れてもおかしくないような部分もあったため、脾臓の摘出も行なった。脾臓に関しては多発性出血と結節性過形成と言う良性のものでしたが、放っておいたら破れて急死するところでした。

この例は本人が以外に元気で、食欲も最近までそこそこあったので、油断してしまった様ですが、体重も減少し、来院時は血便もかなりひどいものでした。術後は経過が悪く、はじめから腹水が溜まっていて腹膜炎を既に併発していたこともあり、播種性血管内凝固症候群(DIC)という合併症がおこり、残念ながら助けることが出来ませんでした。1週間以上下痢が続くのは慢性下痢ということになり、単純な下痢ではないことを知っておいて下さい。

 

 

      

 

 

 

14歳のシェルティーの膀胱癌

 

頻尿で血混じりの尿をする、長い時間排尿姿勢をしても尿が出ない、ということで検査をすることになった。尿検査で尿に血液反応があり、尿中の沈査の細胞診で上皮系の悪性細胞が多数見られ、さらに超音波所見(上の写真)で、膀胱内の背側尾方に2.1cm×1.9cmの腫瘤が見つかった。

 

 

 

腫瘍は膀胱三角といわれる尿管の開口部に近いところに存在していたので、手術で腫瘍を完全に周辺から大きく取ることができません。そのため飼い主様と相談の上、周辺リンパ節や肺などの転移が見られないので、できるだけ腫瘍を摘出し、術後には化学療法を実施することになった。左の写真は膀胱切開して、膀胱内の腫瘍がみえているところで、右の写真は取り出した腫瘍を示している。摘出した腫瘍は病理組織検査により移行上皮癌(膀胱癌)と言う診断結果だった。術後は抜糸が終わり、現在抗炎症剤であり、抗腫瘍効果のあるピロキシカムというお薬を使い始め、さらにシェットランドシープドッグと言う犬種は10%以下ではありますが、MDRI遺伝子に異常があるために抗癌剤が上手く代謝できない場合がありますので、現在確認のため血液による遺伝子検査をしており、結果が出次第抗癌剤を使っていく予定です。膀胱の容積が狭くなっていますので、頻尿気味ではありますが、すでに尿の血液反応が無くなっています。

 

ウェルシュコーギーの高分化型リンパ腫

  
 健康診断の身体検査で全ての体表リンパが腫大しているのを発見し、針生検をしたところ、ほぼ全体に中リンパ主体のリンパ節の過形成のように見えたが、右の写真の拡大像を見るとリンパ球が手鏡状の形態を示しており、このようなリンパ球が全体を占めているということは、高分化型のリンパ腫の特徴である。この種のリンパ腫は化学療法の効き目はほとんど無く、症状の何もない状態なら、治療はしないで、経過を見ることになる。何か症状が出れば治療を始めるようにする。  

ゴールデンレトリーバーの慢性リンパ球性白血病が急性リンパ球性白血病に移行してきた症例

8歳のゴールデンレトリーバーの体表の全てのリンパ節がかなり腫大しており、総白血球数330000(通常10000位) その内リンパ球が280000(通常3000位、ほとんどが中リンパ球でリンパ芽球がマイルドに増加している)貧血があり、骨髄内に腫瘍性のリンパ球が増殖してきている可能性が高い。まだ好中球があまり低下していないので、リンパ腫の化学療法を始めた。2週間で体表リンパ節は1/3に縮小し、白血球も5万台に低下しているが、一般状態の改善が今ひとつのところ。 

 

上の写真は血液塗抹標本を低倍率で見た顕微鏡写真で紫色に染まったリンパ球が一面に観察される。 

 

 

上の写真はさらに拡大した血液塗抹標本

 
  

猫さんの鍼治療

  

 

馬尾神経の圧迫(左の写真)による右後肢の不全麻痺と膝関節および足根関節(右の写真)の関節炎により、起立不能になっていた16歳の猫さんのレントゲン写真。両側のそれぞれの関節液の検査で白血球(好中球)がかなり増加していたためリュウマチのテストも進めている。

 

 
   

鍼治療を希望されましたので、電針とソフトレーザー、および特殊電磁波治療と中草薬の注射により、2回治療しただけで、ステロイドを全く使用せずに、自分で起立できるようになった。上の写真は鍼治療をしている様子ですが、気持ちが良くてウトウトしている。

 

 

両側の股関節脱臼の手術

 

  

他の犬同士のケンカで片側の脱臼がおこり、脱臼の非観血的整復を実施し、バンデージで固定していた際に、ちょっとしたアクシデントで反体側の股関節も脱臼してしまったと言うもので、もともと脱臼をし易い構造をしていたと考えられます。上の写真は股関節で大腿骨の両側の骨頭が上に変移しているレントゲン写真。

上の左の写真は大腿骨の骨頭部を露出した所、右はストライカー社のCOREという電動の骨鋸で骨頭部を切断している写真。

 

  

 

  術後の写真で、関節と大腿骨の近位(骨頭の切除した部分)が離れて接点が無いことに注目。