3歳になる雌のモルモットの左側下顎部の皮下に腫瘤ができており、最近次第に増大してきたと言う主訴で来院した。針生検をしてみるとスライドの一面に好中球があり、化膿していることが分かった。病理検査の結果は短桿菌の細菌塊が病巣内に存在することから、細菌感染による唾液腺膿瘍ということだったので、術後も抗生物質の治療をしている。その術中と術後の写真が下の4枚
3歳になる雌のモルモットの左側下顎部の皮下に腫瘤ができており、最近次第に増大してきたと言う主訴で来院した。針生検をしてみるとスライドの一面に好中球があり、化膿していることが分かった。病理検査の結果は短桿菌の細菌塊が病巣内に存在することから、細菌感染による唾液腺膿瘍ということだったので、術後も抗生物質の治療をしている。その術中と術後の写真が下の4枚
高齢のヨークシャーテリアが1~2週間前から元気食欲がなくなり、昨日から全く食べず動かなくなってきたということで、来院した。来院時体温が40.5℃で白血球は3万近く好中球の左方移動(急性炎症)と単球の増加(慢性化膿性炎症)が見られた。X線検査では腹部に液体貯留を疑わせるスリガラス状の陰影(写真①)があるのと、下腹部のマス様の陰影、また右腎腎盂(写真②)および膀胱内の結石が見つかった。ソケイヘルニア嚢内にも腸管以外の臓器らしいものが見える(写真③)。超音波(エコー)検査ではヘルニア嚢内に管腔臓器内に液体の貯留している像が実られた(写真④)。静脈点滴を開始し、抗生剤やビタミン類も静脈投与として治療を開始した。膿の漏出による腹膜炎を起こしている可能性があったため、その日のうちに手術を実施。
写真① 写真②
写真③
写真④
術前術後の写真
⑤:手術前 写真⑥:開腹時
下の左はヘルニア嚢の切開時。右はヘルニア嚢の切開後の子宮の出現。
写真④:摘出した子宮 写真⑤:子宮壁から膿の漏出があった。
写真⑤:手術直後
術後の経過は良好で翌日から食欲が改善し、4日目に元気に退院した。
2ヶ月半齢のゴールデンレトリーバーがテーブルの下で走り回って遊んでいて、急にキャンキャン鳴いた後から左足を挙上したままになっているという状態で来院した。触診で膝下からかかとの間の触診でやや痛がり、脛骨の外転でかなり痛がる症状を示したため、脛骨、腓骨を中心に後肢のX線検査を実施した。
写真(左:前後方向 右:外側方向)斜めに黒い線が見えるが、螺旋状にヒビが入っているのが分かる。
治療法はまだ若いのでソフトギブスで固定するだけで、安静にしていれば2週間もすると骨の癒合がおきて歩けるようになるはずです。
老齢猫が最近むせるような咳をして、苦しそうだということで来院した。以前の症状を聞かせていただくと、数ヶ月前から「いびき」をかくようになっていたらしいが、食欲も元気もあったので、それほど気にしていなかった。血液検査では大きな異常は無く、頚部X線検査で喉頭周囲の腫瘤により、気管入り口が極端に狭窄していた(下の写真)。元々外猫さんなのと気管入り口の狭窄のため、気管チューブも入れることが出来ないため、永久気管切開または気管切開による気管チューブを介しての呼吸をしてもらうしか助けることが出来ない状態です。現在ICUの酸素室に入っており、安静にしている限りは、何とか呼吸が落ち付いていますが、外に出した途端に一気に呼吸困難になってしまうので、腫瘤部の細胞診すら出来ない状態なので、とりあえず細菌感染によるものか、猫に多いリンパ腫ならば、反応があるかもしれないので、抗生物質とステロイドを投与していますが、現在のところあまり変化がありません。いずれ呼吸不全に陥ることになる事を飼い主の方もご存知ですが、酸素室に入っていると呼吸が落ち着いているため経過観察となっています。
この症例の投稿をした数日後に、飼い主の方と何度かご相談をしてきたが、結論として呼吸不全になって、最悪の状況になるのを待つよりもそろそろ限界になってきた今、楽にしてあげるのがこの子にとって一番良いのではないかということになった。
15歳の日本猫が4日前から食欲低下と軟便がみられたということで、来院した。そして1ヶ月前から600gも体重が減少していることが分かり、腹部触診で3~4cmのマス(しこり)が触知されたため、精密検査をさせていただいたところ、X線検査では特に異常所見はなかったが、超音波検査で回腸・盲腸・結腸の移行部の回盲結口のところにマスがあることが分かり(写真①・②)、回腸の一部や結腸および盲腸の壁が肥厚して内腔が異常に狭窄している(写真③)ことが分かったため、いずれにしても狭窄部を開通させる必要があることから、異常部分を切除し、その切除した検体を病理組織検査することになった。診察してから2日後に手術になったが開腹すると2日前には無かった腹水がかなり溜まっており(やや白濁:写真④)、腹膜には1~3mmの白っぽい小結節が多数存在していた(写真⑤)腹水排出後回腸(4~5cm)・盲腸(全体)・結腸(4~5cm)を腫瘤ごと切除し、結腸と回腸の吻合術を行なった(切除前:写真⑥、術後:写真⑦)。術後は経過順調で、翌日は飲水のみで、2日目に流動食を少量からスタートしたが、毎回100%の食欲で、順調に回復して1週間後に退院した。腸管を10cm以上切除したので、通常排便は1ヶ月間は下痢や軟便が続くが、病理組織検査で大腸癌ということが分かり、しかも腸間膜の多数の小結節はこの腺癌の転移という結果でしたので、予後はあまり良くありません。場合によっては何も治療をしなければ、1ヶ月以内に状態が悪くなることもありえます。現在これからの治療については家族で協議中です。
写真①・写真②
写真③
写真④・写真⑤
写真⑥・写真⑦
1歳弱のトイプードルが3階のマンションから落下し、救急で運び込まれた。来院時はまったく起立できず、腰砕けの状態だった。粘膜再充満時間(CRP)は2秒以上あり、ショック状態だったので、まずは静脈を確保して輸液を開始、同時にルーチンの血液検査とレントゲン検査を行なった。結果は幸いにも胸部には損傷が無く、腹部は恐らく落下時の衝撃で肝臓にダメージがあったと考えられる肝酵素(ALTとAST)の中等度の上昇があった。左の大腿部外側の皮膚には穿孔したと思われる穴が2ヶ所(写真①)あり、骨折端の位置と一致していることと、X線写真の筋肉内に複数の空胞が存在する(写真②)ことから、大腿骨の開放性の複雑骨折であることが分かった。開放性骨折の手術はステンレスのピンとバーを用いた外固定が理想的だが、この犬種は活発に動くタイプなのと、飼い主のお住まいが遠距離なので、頻回の外用処置のための通院が難しいということもあり、特殊なプレートと螺子による手術をすることになった。(写真③は術中・写真④は骨折整復後のX線写真)
写真① 写真②
写真③ 写真④
まだ2~3歳の若い雑種犬がKDPに保護された時から、右の前肢の肢端部が欠損しており、著しい跛行があった。おそらく交通事故に遭って先端が切断されたか、喧嘩傷が化膿して欠損してしまったのか、原因は分からないが、未だに先端の残った組織の化膿と壊死があった(写真①②)。この状態では全身性に感染症を起こす可能性と常に疼痛を伴っていることから、感染を充分コントロールした後、外用処置を続けて肉芽組織があがったら、手術をすることをお勧めした。しかし施設内でのきめ細かな面倒がみられないということがあり、肉球の移植を含む修復手術は実際不可能と判断し、やむなく断脚手術を選択した。(術後の写真③)。手術後は元々長期間の跛行があったせいか、退院時には走れるようになっていましたし、抜糸で来院したとき(写真④⑤)には何の違和感も無く、歩いたり走ったりしていた。元気も以前より出てきたそうですし、あとはどなたか里親さんが決まってくれると良いのですが。
写真①②
写真③
写真④⑤
13歳のシーズーが半年以上前から出来ていた腫瘍が次第に大きくなり、直径5cm位になってきた。しかも頂点が破れて出血してきたという主訴で来院した。他院では年なので危険だから手術は無理だといわれていた。健康診断をした結果、血液検査では総白血球が中等度上昇、特に単球が多いので腫瘍の化膿性炎症から来ていると考えられた。また肝臓の酵素(ALTとAST)が軽度の上昇が見られた。心臓はリバイン(Levine)の評価で左側僧帽弁領域で4/6と中等度の心雑音はあったが、当院の循環器専門担当の、滝沢獣医師が心臓の機能を検査した結果、麻酔のリスクはごく少ないことがわかり、手術を実施することになった。写真は術前と術後および摘出した腫瘍です。
病理組織検査結果は悪性神経鞘腫であった。この腫瘍は遠隔転移はほとんどありませんが、局所再発があり得る為、今後の定期的な診察などが必要となります。
年齢1歳の若い猫さんが2日間外出して帰ってきたら、元気食欲が無く、ぐったりしているといということで来院。触診で膀胱は重度の膨満(写真①)、血液ルーチン検査では白血球のかなりの上昇と尿素窒素とクレアチニン、リンが異常な高値を示し、腎不全になっていることが分かった。レントゲン検査ではやはり膀胱の膨満と腹水の貯留が疑われた(写真②)。尿閉がありそうなので、尿道カテーテルを挿入したところ、血様の液体が抜けてきた。しかし液体を20cc程吸引しても膀胱のサイズは縮小しなかった。そこでカテーテルを挿入したままX線検査をしてみたら、カテーテルが尿道の途中あたりから腹腔内に逸脱していた(写真③)。つまり腹腔内に貯留していた液体をカテーテルから吸引していたことになる。この状態では益々腎不全が進行し、尿毒症になって回復の見込みが無くなってしまうので、飼い主さんとのお話し合いで、状況把握のための試験開腹も兼ねて緊急手術(輸血準備下で)をすることになった。術中の写真が④と⑤だが、腹腔内には薄い血液様の液体(尿臭あり)が溜まっており、写真にあるように膨満した膀胱が黒く変色しており、血行がなくなっている感じがした。実際中を探査してみたら尿道の断裂と血管の断裂が見つかり、結局膀胱は血行が遮断されたため、壊死をしてしまっている状態だった(写真⑥)。何らかの外力によって起きたものだと考えざるを得ないが、腹部の体表には何ら外傷らしいものは無く、交通事故の証拠も無いので、原因は分からない。これは手術による回復は見込めないため、飼い主さんと相談の結果、麻酔のかかっている状態で安楽死になった。
病理組織検査の結果は「膀胱の全層性出血壊死」:外傷などによる急性の出血壊死の可能性が考えられるとのコメント。
写真①
写真②
写真③
写真④⑤
写真⑥
嘔吐、元気食欲なしの症状で来院した中年例のラブラドールレトリーバーが、X線検査でトウモロコシの芯が閉塞(写真①と②)しているのが見つかった。元々副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)があり、中枢神経症状もある子だったので、手術自体もややリスクがあることに加えて、術後の傷の治癒の遅れも懸念された。しかし状態が時間と共に悪化してくるため、飼い主の方とご相談した結果、その日の夜間の手術となった。(写真③は術中の閉塞していた空腸)(写真④は切り取った腸管と異物)
写真①②
写真③④