肛門周囲の腫瘍(肛門周囲腺腫と肛門周囲腺癌)

肛門周囲腺の腫瘍には腺腫と腺癌があるが、見た目は同じ様でも予後が異なるため、予め細胞診やバイオプシーにより、悪性か良性を鑑別してから手術する。写真上部の2枚は肛門周囲腺癌、下の2枚は肛門周囲腺腫

 

 

 

異物摂取の子犬

『マスクを食べてしまった』
との主訴で子犬が来院しました。

来院の際に飼い主様にはマスクの残っている部分を持ってきてもらいましたが、半分位は食べてしまっているようでした。

食べてすぐに来院していただいたので、催吐処置を行いました。
(催吐処置は薬を静脈注射することで行いました)

左側が出てきたマスク、右側が持ってきていただいたマスク。

世界的なコロナのパンデミックにより日常生活にマスクは必須となっています。
特に子犬は好奇心旺盛でイタズラする対象を探していて、マスクは飼い主様の匂いが付いているために犬猫にとってはいい遊び道具になってしまいます。
(猫もマスクのゴムの部分などで遊び噛み切って食べてしまいます。)

自宅内でのマスク管理にご注意ください。

もしも異物を食べた可能性がある場合、自宅に残っている食べた可能性のある物を持参していただくと診察の助けになります。

フクロモモンガの自咬症

フクロモモンガの女の子が4-5日前からの下痢とのことで来院されました。

『下痢の直後からおしりを気にしはじめ、あっという間にひと晩でおしりに穴が開いてしまった』とのことでした。

総排泄孔は硬く血行不良を起こし、正常な状態への治癒は見込めないと考えられました。

生涯傷口からの排泄をするようになってしまう可能性があり、今後もずっとカラーをつけた生活になってしまうかもしれません。

この子は傷から便や尿が出ていたため、一命はとりとめてくれそうですが最悪の場合、死に至る可能性もありました。

 

フクロモモンガは自咬で、場合によっては自分の内臓まで引きずりだしてしまうこともあります。

《フクロモモンガが体のどこかを気にして自咬を始めたら、傷になってしまう前にすぐカラーをする。》ということが大切です。

エキゾチックアニマル科担当獣医師 大竹亜希子

エキゾチックアニマル診療時間:毎週土曜日・その他不定期

  • ウサギ、フェレット、ハムスター、モルモット、ハリネズミ、フクロモモンガ、チンチラ、小鳥など。
    詳しくはお問い合わせください。

動的右室流出路閉塞の猫

17歳の猫が
『3ヶ月前から耳のかさぶたが治らない』
との主訴で来院されました。

耳のかさぶたは両耳にありましたが、特に右耳からの出血が多く猫もそこを気にして引っ掻くために出血を繰り返してしまい、エリザベスカラーをして引っ掻くことを防いでもやはり出血を繰り返すということでした。
耳の細胞診検査では『扁平上皮癌疑い』でした。
(この猫の毛は白色でしたが、白色の猫には耳の扁平上皮癌が比較的多く見られます


血液検査では慢性腎障害Stage2でした。
身体検査ではハッキリとした心雑音が確認されましたが、こちらは2年前より他院にて心筋症との診断から内服薬を続けているとのことでした。

エリザベスカラーをしていても出血を繰り返し、猫のQOL(生活の質)が低下している状態でした。飼い主様も出血を繰り返す猫を見ていて精神的に辛かったと思います。しかし、17歳という高齢になっていること、以前より心臓病(心筋症)との診断で治療を受けていることから麻酔をかけることが心配とのことでした。
そこで心臓の精査のために、レントゲン検査、心電図検査、超音波検査を行いました。
レントゲン検査、心電図検査では異常所見はありませんでした。
超音波検査では心筋肥大は無く、心臓の運動性も異常はありませんでした。
ただし、『動的右室流出路閉塞』というものがみられました。
これは右心室から肺動脈にかけての流出路が狭くなる時があるために、血液の流れが高速になってそこから雑音が生じているというものです。

この状態であれば心臓に関して麻酔は問題なく行えると判断しました。

手術は問題なく終了し、病理組織検査の結果は『扁平上皮癌』とのことでした。

猫の聴診は犬よりも難しく、雑音があっても正常であったり、雑音が無くても異常があることがあります。慎重な判断が必要とされます。

直径3ミリの細径内視鏡による膀胱結石の摘出

8歳の雄のマルチースが膀胱結石を繰り返すため尿道ろう形成術を実施ししたが、X線検査とエコー検査により再度膀胱結石(3mm×4mm)の存在を確認したため、直径3ミリの細径内視鏡にて摘出処置を行なった。

大腿部の血管周皮腫切除後の大きめな皮膚弁(スキンフラップ)を応用した皮膚形成外科

雑種犬12歳の避妊雌の大腿部の腫瘤が最近増大してきたということで来院、細胞診にて非上皮性悪性腫瘍であることが分かり、腫瘍摘出手術になった。腫瘍周囲から大きく切除するのはもちろん、深さにおいても大腿四頭筋の筋膜まで切除することにした。但し、この大きさで切除すると当然通常の皮膚の縫合では閉鎖できませんので、右側腹部の皮膚の皮膚弁(スキンフラップ)を作って、閉鎖することになった。病理組織検査の結果は血管周皮腫だった。写真は順を追って示している。

 

 

 

 

高齢猫の耳介の扁平上皮癌の切除手術

17歳の猫が他院にて高齢でしかも心臓に雑音があるので手術は不可能と言われたが、次第に腫瘍も増大してくると同時に出血がひどくなったので、手術ができればお願いしたいということで来院。血液検査・画像診断(X線検査、エコー検査)・細胞診を実施した結果、SDMA16・USGボーダーラインで腎機能の僅かな低下があるが、心エコー検査で心臓の流失路狭窄があるだけで心筋症や弁膜症は無く、心臓の機能にはほとんど問題ないという循環器専門医の滝沢獣医師よる検査結果の回答があったので、手術を実施することになった。その術前から術後までの写真をご覧ください。術後の経過も良くしばらく気分よく生活できることでしょう。

術前切開

                                                             

シーズーの実質性角膜潰瘍

7歳のメスのシーズーが目を開けずらいとのことで来院した。

眼科検査では結膜充血が重度で、角膜にも血管新生が見られており角膜には大きなクレーター状となる潰瘍が見られた。
通常フルオレセイン 染色による検査では角膜潰瘍は緑色に染色されるが、このシーズーでは中心部は染色されずにリング状に緑色に染色されており、染色されていない中心部(潰瘍底)がデスメ膜に達していることが分かった。

角膜は4層構造からなっており、そのもっとも表層(角膜上皮細胞)のみの欠損である表層性角膜潰瘍であれば1週間ほどで治癒するが、角膜実質まで及んだ角膜潰瘍では治癒に時間がかかる。特に実質深くまで及んだ角膜潰瘍では角膜穿孔に進行してしまうことがあるため、手術による結膜フラップや眼瞼縫合を行い、それを防ぐ必要がある。
このシーズーでは外科処置は選択せずに、『動物用コンタクトレンズ』を装着する治療を選択した。(下の写真の青い点々がコンタクトレンズ)
コンタクトレンズ装着後1週間ほどで潰瘍は少しずつ縮小して約1ヶ月半で潰瘍は治癒したが、これだけ深い角膜潰瘍であると、角膜実質のコラーゲン配列が乱れることで角膜の透明性はなくなり白く瘢痕が残ってしまう。さらに黒色の色素沈着も残存してしまう。



シーズーやパグなど頭短種では目が大きく、そのために角膜潰瘍の治りが悪く進行してしまうことがあります。
そのためエリザベスカラーの装着はもちろんのこと、頻繁に目薬を滴下していただく必要があり、進行しないか頻繁に目をチェックする必要があります。

1.5ヶ月齢の子猫の胃内異物摘出手術

体重500gに満たない子猫が哺乳器の先端のシリコン製乳首を飲み込んでしまった。翌日絶食で連れて来ていただき、直径3mmの内視鏡で摘出を試みたが、粉ミルクの一部が残っており、うまく操作できず、結局、胃切開により摘出した。無事に退院しミルクや離乳食も食べれるようになった。

若齢のラブラドールレトリーバーの線状異物による腸閉塞

3日前にもしかしたら刺繍糸を食べたかもしれないが、食べたかどうかも不明。一昨日より嘔吐・下痢・元気食欲無くなり、他院にて皮下輸液と制吐剤を投与。翌日ぐったりしてきたため、当院を受診。発熱40℃、CBCやChemの検査では好中球増多、膵炎なし。レントゲンで小腸領域に小さめのガス像が多数存在。Echo検査で小腸内にかなりの液体貯留。以上の結果から腸閉塞を疑い、開腹手術を行った結果、腸管がアコーデオン状に手繰られており、触診で胃内と小腸内に異物の塊が蝕知され、腸管内には繊維状の異物に触れることができた。胃切開及び小腸切開により刺繍糸が束になった塊状の異物を摘出し、その塊につながる糸を切断して異物の全てを取り除いた。