犬の会陰ヘルニア整復

肛門の横が腫れているとの主訴で、12歳のトイプードル(未去勢雄)が来院された。

身体検査にて左右両側の会陰ヘルニアを認めた。

レントゲン検査では直腸や膀胱などの臓器の逸脱は認められなかった。

 

※ヘルニアとは、体内の臓器などが、本来あるべき部位から「脱出・突出」した状態

 

 

ヘルニア内容は脂肪組織であった。

直腸を支持する筋肉群の萎縮が進行していたが、ヘルニア孔の閉鎖は自己筋組織をもちいておこなった。同時に去勢手術も実施した。

 

 

 

会陰ヘルニアは中~高齢で未去勢の小型犬、または中型犬に多く発生する。

 

直腸を支持する筋肉群が萎縮、または筋膜間の結合の分離によりヘルニア孔(輪)が発生し、骨盤腔内・腹腔内の組織や臓器が会陰部の皮下に脱出する。

 

治療には外科的な整復術が必要な疾患である。

 

整復法の術式は症例によってさまざまで、内閉鎖筋フラップ、半腱様筋フラップ、仙結節靭帯、総鞘膜、ポリプロピレンメッシュなどをもちいて整復をおこなう。

 

会陰ヘルニアの主な発生要因は、アンドロゲンまたはテストステロンであることが示唆されているため、若齢期に去勢手術を実施することで、会陰ヘルニアを予防または再発を予防することができる。

 

 

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猫の扁平上皮癌

左側の口が腫れている、という主訴で13歳のネコが来院された。

口腔内の左側上顎歯肉に腫脹病変部位を認め、その一部は感染により排膿・壊死をおこしていた。

 

 

麻酔前スクリーニング検査を実施後、全身麻酔下にて病変部位の組織生検をおこなった。

病理検査の結果は【扁平上皮癌】であった。

 

 

扁平上皮癌は、猫の口腔内に発生する悪性腫瘍のなかでは最も多く発生すると報告されている。(発症平均年齢は11.6~13.5歳)

 

 

一般的に猫の口腔内扁平上皮癌は犬と同様に局所リンパ節、遠隔部位への転移率は低い。

そのため、病変局所のコントロールがとても重要である。

治療方法は発生部位・病変の大きさなどによってことなるが、早期に発見された症例は外科切除が適応になる。

 

しかし、診断時にはすでに腫瘍の増殖が進行し、外科切除の適応外になっていることも少なくない。

 

そのような症例には、疼痛や腫瘍の増大に伴う合併症の緩和目的で放射線療法が適応となる。

しかし、猫の口腔内扁平上皮癌は他の内科治療も含め、治療は困難を極め、全体的には予後が不良である。

 

当院では、猫の口腔内扁平上皮癌に対し、切除可能であれば外科治療を実施し、そのほかにも内科療法(リン酸トラセニブ、非ステロイド性抗炎症剤)を実施している。

 

また、自力採食が困難になった症例に対して、飼い主様と相談の上、経食道チューブや胃ろうチューブを設置することもある。

 

 

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イヌの免疫介在性溶血性貧血(IMHA)

数日前から元気が無く、食事を食べる勢いも無いとの主訴で15歳のイヌが来院された。身体検査では体温が39.5 ℃と発熱しており口腔粘膜は蒼白であった。血液検査ではヘマトクリット値は17.2 %で重度に貧血しており、CRPは14 mg/dlと高値であった。血液化学検査では異常は無く、レントゲン検査および腹部超音波検査で軽度の脾腫以外の異常は無かった。血液塗抹では赤血球の大小不同があり、球状赤血球の顕著な増加、多染性赤血球、ハウエリジョリー小体、赤芽球の出現が確認できた。網状赤血球数も増加しており再生性貧血と判断した。自己凝集は無く、クームス試験は陽性であった。これらの所見から免疫介在性溶血性貧血と診断した。

一般的にIMHAの治療としては免疫抑制療法を行うが、その主軸となるのはプレドニゾロン(ステロイド)である。プレドニゾロンに加えてその他の免疫抑制剤を併用することもある。また、重度の貧血の場合は輸血やヒト免疫グロブリン製剤で免疫抑制療法が効果を示すまでの時間稼ぎをする必要がある。また、IMHAは血栓症や播種性血管内凝固(DIC)を高率に併発するため要注意である。
このイヌでも来院初日より免疫抑制療法、抗血栓療法や輸血、補助療法を行うことで、一命を取り留めた。退院後はプレドニゾロンを漸減し、その他の免疫抑制剤に切り替えていった。

IMHAは致死率の高い緊急疾患と考えらており迅速な対応を必要とする。

写真では多数の球状赤血球が確認できる(正常な赤血球は真ん中が白く見えるが、球状赤血球は小さく濃く染色される)

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犬の小腸腺癌による腸閉塞(外科治療)

 

12歳の柴犬(避妊雌)が昨日からの食欲廃絶、嘔吐を主訴に来院された。

血液検査ではCRPの軽度上昇(2.5mg/dl)がみられたが、その他の項目はSpec-cPLを含めて正常であった

腹部エコー検査にて小腸の肥厚・閉塞所見、また肝構造の全体的な不整をみとめた

小腸のFNAにてリンパ腫を否定したため、開腹手術をおこなった

 

閉塞所見がみられた小腸部位は硬く変化し、またその部位の前後は虚血壊死がみられた

病変・虚血部位を含んだ小腸の切除を行った

また、肝臓尾状葉に肉眼的変化もみられたため、切除生検を行った

小腸の病理検査は小腸腺癌(マージン陰性)であり、肝臓は小腸腺癌の転移病巣であった。

犬の腸管の腫瘍はまれであるが、その中でも腺癌はリンパ腫に次いで発生の多い腫瘍である。

腺癌は腸間膜リンパ節、肝臓、脾臓、大網、腎臓、肺への転移が認められることもあり、また、癌性腹膜炎を起こすこともある。

 

 

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イヌのアジソン病(副腎皮質機能低下症)

4歳のトイ・プードルが午後外来の最後の時間に『食欲がない』との主訴で来院された。1ヶ月前と比べると体重が600 g減少していた。身体検査では脱水しており、レントゲン検査では心陰影が縮小していた。血液検査ではリンパ球増多、グロブリン値上昇、コレステロール値の減少、CRP値が上昇していた。電解質異常もあり低ナトリウム血症となっていた。超音波検査では副腎の厚みが1 〜 2 mmと薄くなっていた。

ここまでの検査でアジソン病(副腎皮質機能低下症)を疑いACTH刺激試験を行う事とした。この検査は特殊な注射を投与する前後で採血を行い、血中のコルチゾールという物質を測定するもので外注検査となるためにすぐに結果はでない。しかし、できる限り早く処置を行わないと『アジソンクリーゼ』という重篤な状態に陥ってしまうため、この日はアジソン病と仮診断し治療をスタートした。

治療としては、フルドロコルチゾンおよびプレドニゾロンの内服を主軸とし、脱水状態により点滴を行った。後日報告されたACTH刺激試験の結果(コルチゾール値)は、測定限界以下であったためアジソン病と診断された。
治療開始後すぐに食欲・元気ともに元に戻り、体重も一気に増加した。

 

 

アジソン病は緊急疾患になり得る怖い病気の一つです。副腎という臓器からのホルモン(特にミネラルコルチコイド)が不足する事で電解質異常が引き起こされ、低ナトリウム/高カリウム血症の状態になります。特に高カリウム血症では不整脈のために死亡してしまうこともあります。

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