月別アーカイブ: 1月 2014

ミニチュアダックスの乳腺腫瘤摘出のために検査して見つかった肺癌

14歳のミニチュアダックスフンドの左第2乳腺に1cm程のしこりがあり、病理組織検査を目的に切除バイオプシーをすることになった。 麻酔をする手術は必ず術前検査をしますが、血液検査では完全血球検査と血液化学検査をしたが、以前から肝酵素が高い以外はほとんど正常値だった。ところがX線検査をしたところ右側の肺の後葉に2cm大の腫瘤が見つかり(写真①腹背方向・写真②左下横臥)、飼い主の方と相談の結果、乳腺の腫瘤と肺の腫瘤を同時に摘出することになった。術前の検査としてMRI検査により、肺の他の部分に腫瘤がないか、また他の臓器にも異常が無いかを検査する必要があったため、当院と提携しているキャミックという検査センターに予約し、翌日MRI検査を実施した。その結果(写真③)、右肺の後葉に気管支を含む腫瘤があり、それ以外の肺葉には腫瘤はなく、付属リンパ節の腫大もない(写真④⑤)腹部のMRI画像では脾臓に腫瘤のようなものが見られたが(写真⑥)、超音波検査で高エコーの腫瘤が認められ、結合組織の増生の可能性が高かった。その他にはわずかな僧帽弁閉鎖不全があった程度で異常が無かった為、日を改めて右側後葉の全摘出手術および乳腺腫瘤の摘出手術を実施することになった。 開胸手術は痛みを伴う手術のため、術前から鎮痛剤投与、術中はビブバカインによる局所の浸潤麻酔や胸腔内投与、術後にもフェンタニールパッチによる鎮痛処置を行った。また閉胸する際に肋骨の後方の神経・血管を圧迫しないように肋骨の小穴に糸を通して、切開創を縮めてから肋間筋を縫合するようにした。このことにより術後の肋骨の痛みがかなり改善される。 手術により摘出した右肺後葉と腫瘍が写真⑦に示されている。摘出した肺葉には空気が入っていないとかなり萎縮して写真の様に小さく見えるが、腫瘤は白っぽく盛り上がっているのが認められる。 病理組織検査の結果は肺癌と乳腺癌:肺の腫瘍は動物では発生頻度は1%以下といわれ、まれな腫瘍といえる。ただ犬の悪性肺腫瘍の71%に血管やリンパ管への腫瘍細胞の浸潤があり、23%で肺門リンパ節を超えた遠隔転移が見られ、最も転移率の高い腫瘍は扁平上皮癌と未分化癌で肺癌や気管支肺胞腺癌は転移しにくいとされている。 どちらの腫瘍も切除した組織の断端には腫瘍細胞は存在しなかったが、切除した乳腺癌の一部に癌細胞の脈管(血管内)浸潤を疑わせる像が見られたということなので、今後の転移発生に十分な注意が必要だ。また通常は乳腺癌が肺に転移するのが一般的で、この症例でも乳頭状腺癌の形態で肺胞内に腫瘍が広がっていた様なので、乳腺癌の肺転移と考えて良いかもしれない。 写真①(楕円形) 写真②(円形) 写真③ 写真④(矢印で示した所が腫瘍) 写真⑤(下の矢印が肺後葉のマス:白い部分) 写真⑥(白く円形の部分) 写真⑦(摘出した腫瘍を含む肺葉:肺は縮んでいる)  

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重度子宮蓄膿症に膀胱結石と胆石を伴った13歳のミニチュアダックスフンド

未避妊のミニチュアダックスが1週間前から元気食欲無く、水ばかり飲んでは嘔吐するという症状で来院。体温は低下ぎみで、脱水があり、かなり痩せていた。また椎間板ヘルニアの手術を3年ほど前に受けており、排尿、排便がうまくできていなかった。血液検査では好中球の左方移動と単球増多を伴う著しい白血球数の増多が見られた。血液化学検査ではアルカリホスファターゼの上昇があった。X線検査所見は恐らく膨大した子宮と思われる部分が腹部全体を占めており(写真①)、また膀胱内に結石が2つ存在し(写真②③)、胆嚢内にも結石が見られた(写真④)。超音波検査では子宮内にやや低エコーに写る濃度の高そうな液体の貯留が確認できたため(写真⑤)、子宮蓄膿症と診断した。まずは静脈輸液を始め、その日の夜に手術となった。膨大した子宮と卵巣を切除し(写真⑥)、次に膀胱内から2つの結石を摘出(写真⑦)、そして閉腹。摘出した結石が写真⑧。食欲は翌日から出てきたが、吐物の誤嚥による局所性肺炎の為のネブライザー治療もあったため、咳も無く一般状態が良くなった6日目に退院した。 写真① 写真②       写真③   写真④ 写真⑤ 写真⑥ 写真⑦ 写真⑧    

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ジャーマンシェパードの胃捻転症候群による緊急手術

雄の10歳のジャーマンシェパードが1ヶ月前に嘔吐があって来院した時はレントゲン上も異常なく、対症療法のみで、2日程で嘔吐も食欲も改善してその後も異常がなかったが、今回は2日前から元気食欲なく、昨晩から全く食べなくなったと言うことで来院された。来院時はかなりの虚脱状態で腹部の膨満があったので、まず套管針を経皮的に胃に直接穿刺し、胃内ガスを抜き、すぐにX線検査をした。(写真①は腹背像と写真②は側面像)どちらも胃の幽門部と噴門部が180度逆の位置になっている。すぐに緊急手術となり、開腹し捻転を戻したが、血行障害による脾臓のうっ血壊死を起こしてきていたので、大きさや色が戻らなかった(写真③)ため、脾臓摘出も実施した。重度の場合胃の壁も血行障害のため壊死を起こすことがあるが、この患者さんは胃壁の色は辛うじて紫色にはなっていたが、壊死までには至らなかったため、胃壁と腹壁のベルトループ法による胃固定術を実施して(写真⑤)閉腹、手術を終了した。(写真⑥はベルトループ法を図示したもの)術後は経過がよく、食事療法を行い5日目に退院した。 写真①   写真② 写真③ 写真④ 写真⑤      

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シーズーの尿路結石による尿閉で重度の腎不全を起こした症例

8歳の雄のシーズーが3日前から尿が出にくくなり、元気食欲がなくなっていたが、今朝から食欲廃絶、嘔吐、虚脱になってきたということで受診。膀胱は過大に膨満していたため、まずは膀胱穿刺により尿を吸引排出させた。X線検査により、尿道には多数の大小の結石が存在し、これが閉塞を起こしていた(写真①②矢印)。血液検査結果は総白血球数が22650と高く、好中球の左方移動・単球増多があって、かなりの感染症や炎症が起きていることがわかった。腎機能検査は血中尿素窒素(170)、クレアチニン(7.9)、リン酸(18.7)と異常な高値で、重度の腎後性腎不全があることがわかった。また電解質のナトリウムと塩素が低値でカリウムは7.3と高値だったので、生理食塩液の点滴を開始。処置としては尿道の結石をバルーンカテーテルを使用し、尿道から生理食塩液を使って注射器で圧をかけて膀胱内に戻すことをした。数回繰り返しこの処置を行った結果、膀胱内に結石が戻ったため、次に腹部正中切開・膀胱切開(写真③)にて膀胱内に戻った結石を鉗止で摘出した。大きめな結石は4.5mmから3mm大のものが5つと細かい粒状から砂状のものが多数摘出できた(写真④)。写真③のように膀胱壁全体が充出血と血行障害で赤黒くなっており、膀胱の壊死による破裂や機能障害が懸念されたが、術後3日間尿道カテーテルを留置して点滴治療を続けた結果、食欲や元気も改善され、4日後にカテーテルを抜去した後も何とか自力排尿ができるようになり、腎機能も改善したため5~6日後には退院する予定だ。 写真① 写真② 写真③ 写真④    

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11歳の犬の大腿部皮下にできた悪性神経鞘腫

11歳の雌のイングリッシュセッターが昨年7月に大腿部外側皮下に1センチ程の腫瘤があった(写真①)が、最近になって大きくなってきたということで来院。細胞診をしてみると非上皮系の悪性腫瘍を疑わせる所見が得られた為、口腔内の第3後臼歯の横に存在した歯肉の腫瘤(写真②)と共に切除バイオプシーをすることになった。大腿部の腫瘤は悪性腫瘍を想定して、周囲2cm以上のマージンを取り、深さに関しては下層の筋膜まで剥離して切除した(写真③)。病理組織検査結果は大腿部皮下の腫瘤は悪性神経鞘腫で腫瘍辺縁の神経束等に腫瘍細胞の浸潤は無いという結果だった。しかし切除した周囲の定期的なチェックは必要でしょう。この腫瘍は比較的稀な腫瘍と言われているが、先月にも遭遇しており症例報告しているが、以外に多い腫瘍なのかもしれない。歯肉の腫瘤は線維腫性歯肉腫(別名・周辺性歯原性線維腫)という良性腫瘍だった。 写真① 写真② 写真③(術後)    

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